「ハルツームは暑いな。カドグリは雨が降り始めていい季節だっていうのに」
JVC事務所に顔を出すなり、ユヌスはそう言って笑いました。彼にとっては久々のハルツームです。そして、今回のハルツーム出張をもって彼のJVCスタッフとしての任期も終了することになります。
元々はJVCカドグリ事務所の大家さんだったユヌス。カドグリの市場で仲間と商売をしていました。「NGO」とか「人道支援」とかには、縁もゆかりもなかったわけです。
その彼が、一昨年の南コルドファンでの紛争勃発後、緊急支援を始めようとしていたJVCの臨時スタッフに志願してきました。きっかけは、紛争の口火となった2011年6月のカドグリ市街戦です。あの「恐ろしい夜」がなかったら、未知の世界であるNGOで私と一緒に仕事をすることも、あり得なかったでしょう。
それ以降、1年半にわたりJVCカドグリ事務所の中心メンバーとして活動してきたユヌス。この「現地便り」でも、私よりもはるかに登場回数が多い主役でした。しかし、事務所の運営も落ち着いた今、お互いに話し合った末、元々の領分である商売の世界に戻ることになりました。
「この1年半、JVCのおかげで貴重な経験をさせてもらったし、色々な勉強ができた」と言うユヌス。
「それに、なんといっても知り合いが増えたよ。以前から商売の関係で市場には知り合いが多かったけれども、今は、州政府や他のNGO、国連にも知り合いがいる。活動地だったムルタ村に行けば、子どもからお年寄りまで、みんながユヌス、ユヌス、と親しく呼んでくれる。こんなのは初めてだ」
そう言って、満足そうな顔を浮かべました。
JVCこそ、カドグリの地元をよく知っている彼がいなければ、紛争で一時閉鎖した事務所を再開し、その後の活動を実施することはとてもできませんでした。感謝の言葉もありません。

「ところで、この後はどうするの?すぐにカドグリに戻るの?」
そう尋ねると、
「いや、いま家族はハルツームに戻って生活しているからな。しばらくはハルツームで家族と暮らさないと許してもらえないよ」
「じゃあ、毎日、何をして過ごすの?」
「しばらくは、娘の中学入学の手続きだ。6月下旬には学校が始まるんだが、まだ手続きが終わらないんだ」
「手続きって、そんなに面倒なの?」
「おお、とんでもないぞ。今までカドグリで州政府からJVCの活動許可を取ったりするのに苦労してきたけれど、それ以上だ。毎回学校にいくたびに『まだ書類ができていない。明日また来てくれ』『明日』『明日』って、いったいいつになったら終わるんだか、さっぱりわからん!!」
苦労は尽きないようです。
【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。
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