\n"; ?> JVC - 収穫の春 - スーダン日記
2013年5月18日

収穫の春

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年5月20日 更新

「今日も暑いですね」

それが毎日の挨拶代わりです。4月、乾季も終盤に入った南コルドファン州。1年で最も暑い時期です。ムルタ村の人々は、40度をゆうに超える日中の時間帯を避けて朝早くに農作業を行います。それに合わせて、JVCスタッフのサラも朝一番に村へと出掛けました。先月、水が涸れそうになったためJVCが支援して深く掘り込んだ灌漑用水の池を見に行くのです。池の水は地下から湧き出てくるため、深く掘ればそれだけ長く使うことができます。

畑ではオクラの白い花が咲き、収穫が進む畑ではオクラの白い花が咲き、収穫が進む

畑では、大きく育ったオクラの白い花が熱風に揺れています。その先では、農家のハディジャさんが池から水を汲んでいました。覗き込んでみると、先月は十分に湧きだした水が、暑さと乾燥、それに農業用水での利用によって、もう底の方にわずかしか残っていません。

こんなに水面が低くては汲み上げるのも大変な重労働、と思いますが、ハディジャさんはシャドゥーフ、そう、以前の現地便りでご紹介した「跳ねつるべ」を使って上手に汲み上げていました。

サラ(左)にシャドゥーフの説明をするハディジャさんサラ(左)にシャドゥーフの説明をするハディジャさん

カドグリ市内で生まれ育ったサラは、シャドゥーフを自分で使ったことがありません。なので、どうやってこれで水を汲むのか、興味津々で見ていました。

「こうやって使うんだよ」
そんなサラに気付いたハディジャさんが、教えるように使ってみせてくれました。

汲み上げた水を水路に流し込む。写真手前に大きく写っているのが、土を固めて天秤棒に付けた「おもり」汲み上げた水を水路に流し込む。写真手前に大きく写っているのが、土を固めて天秤棒に付けた「おもり」

シャドゥーフの天秤棒の先からは、真っ直ぐな細い棒が垂れ下がっていて先端にポリタンクが付いています。このポリタンクを、すぐ後ろの小さな溜池(水面が低いため写真では見えませんが)まで降ろして水を汲み、引き揚げます。この時に、天秤棒の反対側に取り付けたおもりのおかげで、力を使わなくても梃子(てこ)の原理で跳ね上がるようにポリタンクを引き揚げることができます。汲み上げた水は、灌漑用水路にザバーッと勢いよく流し込みます。

「このシャドゥーフは、誰が作ったのですか?」
そう尋ねるサラに、
「村の男たちに頼んだんだよ。得意な人がいるのさ」
とハディジャさん。野菜づくりは主に女性がしていますが、男にだって色々と役回りがあるのです。

それにしても、昔からの技術も使いながら、乾季の終わりになっても野菜の栽培と収穫が続いているのは新鮮な驚きです。

ウムハレンさんに話を聞くサラウムハレンさんに話を聞くサラ(右)

水路の流れに沿って菜園の中を歩いて行くと、別の農家が穫り入れをしていました。ウムハレンさんです。去年、6人の家族とともに故郷の村から避難してきた彼女は、ここムルタ村に住んでいる親戚に区画を分けてもらって菜園に参加しました。
サラはメモ帳を取り出して、収穫がどのくらいの収入になったかを尋ねました。これも、今回の訪問の目的です。

「ジルジル(ルッコラ)、アリグラ(クレソン)、それにオクラも摘み取ってね、毎日10スーダンポンドくらい売っているよ。あとは家で食べてるね」
サラが
「毎日市場まで売りに行くのですか?」
と尋ねると、
「そうじゃないね、畑で穫り入れをしていると、村の人が買っていくんだよ」

なるほど。村の中にはカドグリの町に勤めに出ている家庭もあれば、乾季は炭焼きなどで生計を立てて野菜を作っていない家庭もあります。ですから、村の中でも売れるのでしょう。
それにしても、毎日10スーダンポンドの収入とは、なかなかのものです。カドグリの町に出掛けて、どこかの家や事務所で掃除や洗濯など日払いの仕事をした時の収入の相場が10~20スーダンポンド。それよりも稼げるわけではありませんが、採った野菜は家でも食べられるし、町に行く必要がないので子供の世話もできるし、よい点はたくさんあります。

畑に出ていたほかの農家にも尋ねてみると、だいたい3~4日に一度くらい野菜を売り、1回で20スーダンポンド程度の収入になるようです。
顔なじみの農家、サブラさんの畑にも足を運んで話を聞きました。

「山盛りの野菜をカドグリの市場に持って行くとね、30スーダンポンドくらいで売れるよ」
ジルジルの葉を摘み取りながら、そう教えてくれました。
「でも、カドグリまではどうやって持って行くんですか?」
「ああ、ウチの息子がね、自転車に積んで売りに行くんだよ」
「じゃあ、どこの家も男の人に頼んで市場に野菜を持って行くと、もっと売れますね」
とサラが言うと、横で聞いていたスタッフのユヌスが口を挟みました。
「ダメだ、ダメだ。危険すぎる。息子ならまだいいけど、大人の男にそんなことを頼んだら、市場に行って野菜を売ったきり、どっかでカネを使っちまって家にカネは入らないぞ」
やっぱり、男はダメなのか・・

4月が終わり、5月になるともう雨季。農家は、雨を待って種蒔きの準備に入ります。また、忙しい時期の始まりです。

【おことわり】

現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。

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