幹線道路から脇道へと入り、前日の雨でできたぬかるみを避けながら、私たちが乗ったクルマは目的地へと向かいます。州都カドグリの町から約1時間、岩と石だらけの丘陵地が開けたところに目指す村、ウドゥがありました。ここが私たちの新しい活動の予定地です。今日は協力団体の現地NGO、NMIADのスタッフと一緒に挨拶のため村を訪問しました。
雨季が始まり、今日は絶好の種まき日和。村人たちは鍬を持って耕したり、種まきをしたりと忙しそうです。
クルマを停めると、鍬を持ったおじさんが寄ってきました。これから農作業でしょうか。「ちょっと鍬の写真を撮らせてもらえませんか」と頼むと、おじさんは喜んでカメラの前でポーズ。

しかしこれ、鍬と言うよりもスコップです。使い方も、頭の上から振り下ろすのではなく、しゃがみ込んで土を掘り起こす感じです。そう、ちょうど写真のように、ですね。
この地域では深く耕すことはないようです。畑によっては、ちょこちょこっと穴だけを掘って、そこに種を蒔いていきます。

私たちの来訪を知って、村のリーダーが畑から戻って来てくれました。この地方ではリーダーは「ウムダ」と呼ばれています。ウムダは袋からソルガムの種を取りだして見せてくれました。「ほら、色んな種類があるんだ」
ソルガム(モロコシ)はこの地方の主要作物。製粉して主食のアシーダやケセラを作るほか、お菓子の材料にもなります。お酒もできますね。雨季の終わりには高さ2〜3メートルにも生育し、その先端に穂を実らせます。
ウムダには、今年3月に調査のため村を訪問した時にも会っています。飄々とした雰囲気が印象的で、前回は私たちに「今まで数多くの援助団体が村にやってきて、同じような質問を山ほどして帰って行ったけど、どの団体も二度と戻ってこなかった」と言い、アンタ達はどうなんだ、とばかりに私たちを牽制していました。
「ほら、こうして戻ってきましたよ」と私が言うと、「はっはっは、そりゃ良かった」と言って笑っています。

南北内戦中に戦場となったこの村からは、多くの住民が国内避難民となってハルツームなどの都市に逃れました。内戦終結後も、「北」(ハルツームの政権党である国民会議党:NCP)と「南」(スーダン人民解放運動:SPLM)との政治的な争いに翻弄され、隣の村も含めて深刻な住民間抗争が起きています。ムスリムによるキリスト教会の放火や、犠牲者を伴う発砲事件も、つい昨年のことです。
あれは、カドグリの政治家が村人をけしかけたんだ。そうでなければ、村人同士が争う理由なんてない」とウムダ。「でも、長い内戦や混乱で、村はすっかり取り残されてしまった。学校の校舎は足りないし、井戸も壊れている。診療所があっても医者も薬もない」そんな話をしながら歩いて行くと、村の中心、小学校の校庭にでました。
学校では、ちょうど給食の時間でした。低学年の生徒50人くらいが木陰に腰掛けて、数人のグループ毎に大きな器を囲んでいます。何を食べているの?
「バリラ」と呼ばれるその食事は、ソルガム(コウリャン)とアダス(レンズ豆)を炒めたもの。いずれも村で収穫されたものです。勧められるままに一口つまんでみると、ほどよい塩加減でなかなかいい味です。
美味しいので二口め、三口めと食べてふと顔を上げると、なんと、子供たち全員が食べるのをやめて、一斉に私に視線を向けています。
みんな、驚いた顔つきです。ただでさえ外国人が珍しい上に、小学校の給食のバリラを食べてるなんて!なんだこいつは!?という感じでしょうか。
そんなところへ、「やあ、久し振りですね」と言って校長先生がやってきました。校長先生と会うのも前回の訪問以来です。「実は、明日は学校の終業式なのです。生徒の歌や踊り、ゲームがありますから、ぜひいらっしゃいませんか」という招待を受け、私たちは喜んで終業式に参加することにしました。

学校を後にして、村を一望する裏山に登ることにしました。案内役は村の若者。モスクの横を抜け、家々の間をしばらく歩くと山道になります。
ここ南コルドファン州には、大きく分けて2種類の人々がいると言われます。「ヌバ」と呼ばれるアフリカ系の人々と「アラブ系」とされる人々。都市生活者や商人は除き、ヌバは主として農耕、アラブ系は主として牧畜を営むとされています。ここウドゥの住民はヌバの人々で、彼らの言語で会話し、多少の家畜とともに農耕を主とした生活を営んでいます。
ヌバの人々は「山の民」であり、山の中腹や頂上近くにも石で土台を組んで家や家畜小屋、倉庫を建て、石組の段々畑を作って山の斜面を耕作してきました。

私たちが山道を登り始めると、周囲はそうした段々畑になりました。土壌が流出しないように石を組んでテラスを作り、ソルガムなどの作物を植えています。小さいテラスはタタミ1畳くらいの大きさしかありませんが、そこにもしっかりと作物が植えられています。
テラスが連なる美しい光景が山の中腹まで続いています。畑づくりが目的とは思えない大きな石組の遺構もあり、山全体が何かの遺跡といった感じです。
頂上に立ちました。ウドゥ村が一望できるほか、隣のメレ村、遠くカドグリ方面まで見渡すことができます。村の中は、芽を出したばかりの作物が、薄い緑のじゅうたんになって広がっています。
驚いたことに、この頂上にも石の土台があって、以前は何かの建物があったことを示しています。いったい何なのか。敵の襲撃に対する見張り小屋か?倉庫か?でもなんでこんなところに?
ヌバの石文化、まだまだ謎がありそうです。

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