いよいよ新しい活動地にやってきました。
6月5日、住み慣れた南部スーダンのジュバを離れ、国連のプロペラ機を乗り継ぐこと4時間、スーダンの中央に位置する南コルドファン州に到着。雨が少ないこの地方も既に雨季に入っているらしく、分厚い雲が垂れこめ気温はそれほど高くありません。
空港からクルマで15分、州都のカドグリ市内に入り、エジプト人が経営する顔なじみのゲストハウスに宿を取ります。事務所を開設するまでの間は、宿舎兼仮事務所としてこのゲストハウスにお世話になりそうです。
ここ南コルドファン州はスーダン北部に属し、州都カドグリでは多くの人々がムスリムです。クリスチャンが多数を占める南部スーダンとは服装や町の様子も違います。1週間のカレンダーは日曜から木曜までが仕事日で、礼拝日である金曜日とその翌日の土曜日が公休日になります。私もそれに従って、これからは金曜と土曜に休みを取ることになります。
イスラームの教えにより、人々はお酒を飲みません。当然、町で買うこともできません。が、これに耐えられない、酒好きの外国人援助関係者はあの手この手でお酒を入手しているようです。
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町を歩いてみました。
ゲストハウスを出るとすぐ、井戸からポンプで水を汲みあげる給水施設があります。二輪車にドラム缶を載せてロバに引かせる「給水車」が、ここで水を仕入れて町中に水売りに出かけていきます。ジュバでは給水車は日本の中古車でしたが、ここではロバが大活躍です。
水汲みの順番を待つロバたちの列を抜け、しばらく歩くと町の中心部、市場に出ます。肉、野菜、日用雑貨の店が軒を連ねて、なかなか賑やかです。
「サディガ、サディガ」(アラビア語で「友人」の意)と声を掛けてくる物売りのお兄さん。私を中国人だと思って「チャイナ、チャイナ」と声を掛けてくる物売りもいます。何か売りつけようとして声を掛けてくるのですが、私にはアラビア語がさっぱり分かりません。英語がかなり通用するジュバとは違い、ここはアラビア語の世界なのです。これから勉強しなくては・・。
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南コルドファン州での私たちの活動は、現地のふたつのNGOと協力して行うことになっています。そのうちのひとつ、ムバディルーン(アラビア語で「創始者」「教導者」といった意)の事務所は市場のすぐ近く。カドグリ到着の挨拶を兼ねて訪ねてみました。
「おお、久しぶり!元気だったか?」そう言って迎えてくれたのはスタッフのオマールさん。3月に調査のため訪問して以来、3ヶ月ぶりの再会です。
「ちょうど、これから昼食を取るところなんだ。一緒にどうだ?」と彼が言うので、ご馳走になることにしました。食事どきに訪問客があろうものなら喜んで迎え、分かち合うのが彼らの文化。誘われたら、滅多なことでは断れません。
料理はアシーダとひき肉のシチューです。アシーダは、ソルガム(モロコシ)の粉に水を加え、加熱して練りあげた主食。ひき肉のシチューは、肉と玉ねぎ、それにウェーカーと呼ばれる乾燥オクラを混ぜて煮込んだものです。オクラはこの地方の料理には欠かせない食材。収穫後に乾燥させて、一年中いつでも使います。
食べ方は、アシーダを指でつまんでクルクルっとダンゴ状に丸め、それにシチューを付けてパクリ。左手は使わず、右手だけで食べます。みんな器用に食べますが、私は不器用なのか、指からアシーダがこぼれたり、口のまわりにシチューが付いてしまったり、まだまだ練習不足のようです。
ムバディルーンにはタロディ郡での活動に協力してもらうことになっていますが、カドグリ事務所長が出張中のため、翌週に改めて打ち合わせをすることとし、食事のお礼を言って事務所を出ました。
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続いて、もうひとつの協力団体であるNMIADの事務所を訪れました。
NMIAD(ヌミアッド)の正式名称はNuba Mountains International Association for Development、日本語に訳せば「ヌバ山地国際開発協会」となるのでしょうか?ヌバ山地地域の開発のためのNGOです。
ヌバ山地とは、州の中央部に広がる丘陵状の地域で、「ヌバ」と呼ばれる人々が住んでいます。肌の黒いアフリカ系に属するヌバの人々は、アラブ系を主流とする北部スーダンにおいては周縁化された存在として差別を受け、その不満から、内戦中は多くの人々が「反政府軍」である南部のSPLA(スーダン人民解放軍)に加わったと言われます。一方で、北部側にリクルートされた兵士、北部の影響下に置かれた村もあり、ヌバの人々は二つに引き裂かれ、内戦中は激しい戦闘により多くの村が破壊されました。
こうした経緯から、2005年の南北和平合意において南コルドファン州は「暫定統治地域」とされ、連邦政府(北部)と南部自治政府との共同統治が実施されることになりました。州知事は連邦政府と南部自治政府から交互に任命されています。しかしこの「暫定統治」の期限は来年2011年。期限が来る前に、新しい州知事の選挙と、州政府のあり方を協議する「住民会議」(Popular Consultation)が実施されることになっています。

話をNMIADに戻しましょう。市場からしばらく歩き、小川を渡るとNMIADの事務所があります。代表のアハマドさんに会いました。
再会を喜んだあと、活動予定地の村を訪問したい旨を伝えると、NMIADのスタッフが同行して翌々日に訪問することになりました。NMIADと協力して活動を始めるのはカドグリ南方のエル=ブラン郡。訪問の様子は、次回の「現地便り」でお伝えします。
※おことわり:スーダンでは路上での写真撮影が厳しく制限されているため、町の様子など写真でお伝えすることができません。本当は写真でお見せしたいのですが・・ご了承ください。
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