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ガザ、シファ病院の院長へのインタビュー「戦略的なアドボカシーが欲しいんだ」

パレスチナ現地代表 山村 順子
2018年10月30日 更新

エルサレム事務所の山村です。7月にインタビューのために当病院を訪問させてもらって以来、ことあるごとにメドハット院長(Dr. Medhat Abbas)から直に山村の携帯に、ガザのデモで負傷した患者や、病院の大変な様子が送られてきています。その中には、3月にデモが始まって以降、8月28日までに、デモで103人の医療従事者がイスラエル側の攻撃により負傷したという記事、そして8月7日にデモに参加した青年が、胸と脚を撃たれてその場で倒れこむ一部始終が撮影されたビデオもありました。ここで起きていることをなるべく多くの人に伝え、困窮したガザを救いたいという気持ちがひしひしと伝わってくるものでした。

今回は、9月の4週目に院長にインタビューした内容を紹介したいと思います。このメッセージを一人でも多くの人たちに伝えたいと思っています。

Q.「帰還のためのデモ」で何か月も犠牲者が出続けていますが、病院の状況はどのように変化していますか?

―病院の状況は、以前よりも早いスピードで急速に悪化しているよ。100万ドルの寄付をもらっても、例えばこの金額で賄えるのは飲料水のタンク1ヵ月分だけなんだ。一時的な解決策にしかならないんだよ。プライマリヘルスケアなど、本当にたくさんの需要があるけど、ほんの一部しかカバーできない。患者の治療や手術に1ヵ月22,000本の点滴が必要だけど、10,000本以下しか供給できていない麻酔薬や抗生剤など、様々な薬剤も足りていないよ。

シファ病院の中の、特別手術用の棟。シファ病院の中の、特別手術用の棟。

Q.現在、病院のベッドの数は足りているのですか?

―病院のベッドは約750床あるけど、現在満床なんだ。そのうえ、6人の患者が廊下で入院治療を受けている状況だよ。一番難しい症状の患者がこの病院に運ばれてくるんだ。

Q.今はどのくらいデモの負傷者がこちらに患者として来ているのですか?

―750床中、40人が3月末に始まった「帰還への行進」での負傷者だよ。彼らは、骨、筋肉、血管、脊髄など様々な部分に損傷を負っていて、治療に時間がかかる。回復するのは簡単ではないんだよ。今や、帰還を求めるデモは毎晩行われているよ。今、ガザでは弱い存在である子どもや患者が罰せられているようなものだよ。お金がなくて患者たちに食事も出せないし、十分な治療も提供できない。ケガの治癒には栄養価の高い食事が必要なのに、パンすらも提供できないんだ。(ここで我々が受けていることは)すべての国際法に反している。なぜ患者が罰を受けないといけないのか。ガザでは怪我だけでなく、循環器の治療や、化学療法、放射線治療など高度な治療を受けることができない。そして、治療を受けるためにガザから出ることを許可してもらえない人がたくさんいる。昨年は、ガザ内で適切な治療を受けられないために、57人が亡くなったよ。ガザを出て治療を受けていたら生き残れただろうね。

―ここは一見、(ガザの中では)自由に見えるけれど、人々は旅行もできない。国境を超える許可も出ず、患者も十分な治療を受けられない。封鎖される前は4-6時間でエジプトに行けたのに、今は8-9日かかってしまう。(実際、JVCパートナー団体「人間の大地(AEI)」職員のアマルさんの父も先月、ガザから出る際、エジプトとの国境・ラファで9日間待つことになったという。)若者たちはどうやってこの状況、大きなストレスに耐えればいいのだろう。

Q.病院を支えるスタッフの状況はどうなっていますか?

―現在、医療スタッフは1,729人(うち600人が医者)いるけど、まだまだ不足している。その上、給料も、満額の40~50%しか支払えていないんだ(45日ごとに支払われている)。新規にスタッフを増やすこともできない。さらに、支援してくれるドナーも減っている。一か月燃料をカットされた際、プレスリリースで寄付を訴えたけど、何の応答も得られなかったよ。前はこのような状況ではなかった。資金不足は全て患者や子どもたちに影響するのに・・・。デモが起こってから3か月、医療スタッフはみんな休みなしだったよ。デモのときなんて、14室の手術室が翌日まで動いていた。人々が床に横たわっていた。毎日、新規の患者も受け入れているよ。

Q. 今、最も国際社会にお願いしたいことは何ですか?

いちばんお願いしたいことは、お金ではなく、アドボカシー(政策の提言)だよ。世界にこの状況、ここで起きていることを知らせてほしい。病院が満床なのに、またデモで200人も300人も怪我をしたら、どうするのか。病院の外にテントを特設したとしても、その人数を診られる医師も看護師もいない。薬をもらっても2日で無くなる。一体誰が彼らを受け入れるのか。根本的な解決が必要なんだよ。政治がすべての患者の状況に影響する。でも、まだ何の解決策もない。いつイスラエルとの間に戦争が起こっても不思議ではない状況が続いている。戦略的なアドボカシーが欲しい。僕らは平和を愛している。子どもたちをきちんと育てたいし、病院に来るすべての人を助けたいんだ。

Q.日本の人たちへ、何かメッセージはありますか?

―世界の刑務所に入っている囚人たちですら、囚人としての権利がある。でもこの巨大なガザという監獄に住む我々には、人としての権利が欠如しているんだ。私たちは日本のニュースをよく見ているよ。この病院の機材のために日本政府は1,100万ドルを寄付してくれたんだ。日本にはいつも助けてもらっているから、洪水や地震のニュースを見た際には、日本を助けたいと思ったよ。今までにもたくさん日本が(ガザを)支援をしてくれているのも知っている。日本は私たちのロールモデルなんだよ。ガザの人たちは、日本を本当に尊敬しているし、愛しているんだ。日本は過去に大きな攻撃を受け、そこから現在の状態まで立ち直った。届いたかがどうかはわからないが、私は天皇に手紙も書いて、在ラマッラ日本領事館の大久保所長に渡した。200万人の人々を救いたい、とね。どうか、日本は私たちのことを見捨てないでいてほしい。人道的な解決方法が欲しい。ここで起きているのは人為的な災害だよ。負傷者は治療を受ける権利がある。どうか、日本の人たちに今のガザの状況を知ってほしい。

※院長はJVCが現在緊急支援を行っている、リハビリ専門のエル=ワファ病院でも勤務していた経歴があります。

院長のメドハット氏。院長のメドハット氏。
(聞き手:エルサレム事務所 山村、大澤)

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