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刺繍製品をつくる女性たちの日常

パレスチナ現地代表 山村 順子
2018年4月26日 更新

最近、私たちJVCが日本で販売している刺繍製品の納品点検を行うため、ベツレヘムに位置するアッザ(ベイトジブリン)難民キャンプの中にある刺繍グループの方の家を、久しぶりに訪れました。

その時の彼女たちとのやり取りの様子を少しだけ紹介します。

刺繍グループの集合写真刺繍グループの集合写真

※Y→筆者
S→刺繍グループの女性たち
M→刺繍グループのコーディネーターのマナール(英語ができます)

日本の皆様にお届けする刺繍製品なので、出荷前に糸のほつれがないか、布が曲がっていないか、模様におかしなところはないか、シミはないかなど、仕上がりを細かく確認します。必要があればその場で直し、時間がかかるものは何日かかけて直してもらい、直ったものを後でまた点検しに来ることもあります。
実は、その作業はとても難しいのです。あまり厳しく言ってもやる気を削いでしまうし、甘すぎても今度は日本で売れない製品を出してしまうことになり、結果的に彼女たちの自立的な運営を妨げてしまいます。この日も、こんなやり取りがありました。

刺繍された布をミシンで縫い合わせる仕上げの作業刺繍された布をミシンで縫い合わせる仕上げの作業

Y:「見てここ、かなり斜めに曲がってますよね」(製品を見せながら)
M:「完成品が少し斜めになってしまうのは、この生地の特性で仕方がないのよ」
Y:「でも、日本で売るにはそこをなんとか真っ直ぐ見えるように工夫しないといけないんです......大変なのはわかります。この辺からアイロンをかけてみてはどうですか?」(グループの女性に渡す)
M:「わたし、アイロンかけるの嫌いなのよねえ。だからいつも旦那にはTシャツを買うようにしているのよ。旦那がシャツを欲しがっても、Tシャツの方が似合うわよ、なんて言って誤魔化したりして(笑)」
Y「あはは、わかります~(笑)。わたしもです。アイロンがけは面倒なので、基本的にアイロンをかけないといけないものは買いません」
S「あんたたち、何のんきなこと言ってるのよ、私なんて毎日旦那と息子3人のシャツにアイロンをかけまくってるのよ」
Y「大変!(刺繍を見ながら)こんなところにシミ発見!これ、なんとか落とせませんか?!」
S「あらやだ、本当。このシミ、きっと布屋で生地を買ったときからついてたんだわ。今、石鹸で落としてみるわ」(バタバタバタ......と台所へ走る)
M「(横でお菓子を食べ続けている自分の幼い子どもを見ながら)ちょっと!いつまで食べているの!もうお菓子は終わりよ!!やめなさい!」(子どもからお菓子を取り上げる)

といったような様子で、終始慌ただしく作業していますが、今回も何とか点検が完了し、翌日に出荷できることとなりました。

刺繍をするマナールさんと隣でお菓子を食べる娘さん©Natsuki Yasuda刺繍をするマナールさんと隣でお菓子を食べる娘さん©Natsuki Yasuda
完成した刺繍製品完成した刺繍製品

製品の質を上げることと、彼女たちの生活は別、と自分に言い聞かせ、心を鬼にして厳しく色々指摘していますが、彼女たちの生活の困難さを考えると、こんな厳しく言っていいのだろうか......といつも思います。例えば、挨拶代わりに「最近どうですか?」と何気なく聞いたつもりが、いつも多くの困難を抱えながら生きる彼女たちの暮らしを痛感することになります。

出来上がった製品をみせてくれました出来上がった製品をみせてくれました

コーディネーターのマナールさんは、「最近、ゴミの埋め立て会社に勤める夫の仕事が大変なのよ」と言います。詳しく聞いてみると、「夫の会社は国際機関のプロジェクトで支援されていたの。今まで国際機関と契約したギリシャの会社が運営を担っていたのだけど、契約が終わって急にパレスチナ自治政府が引き継ぐことになったの。そうしたら、誰が会社のトップになるかとか、そういったことで毎日争っているのよ。毎日、毎日よ。夫はギリシャの会社に教わった今までのやり方で仕事を進めようとしているんだけど、そんなことを思うのは夫だけなのよ。一度パレスチナ人だけに任されてしまえば、仕事の効率といったことよりも血縁関係とか、友人関係とかそういったことの方が大事になってしまって、仕事どころじゃないわ」と教えてくれました。これも、国際機関がパレスチナで支援する時の難しさの一つであるように、私は感じます。始める時はいいのですが、撤退した後のフォローまで手が回らないことが多いのです。そして自治政府の汚職や利権争いは地元では有名な話で、いつも苦しむのは一般市民の人たちです。

また、刺繍グループのメンバーであるウンム・アベドさんは、昨年のある日、一番若い息子さん(18歳)が突然イスラエル兵に連行され、刑務所に入っていました。デモに参加したという理由で連れていかれたそうですが、実際のところは、彼はデモで怪我人が出た時のために救急隊員としてその場に待機していただけでした。裁判がすぐ控えているのだと言います。お母さんであるウンム・アベドさんは「彼とは面会できているのよ」と言いますが、心の中では毎日心配でたまらないと思います。1日でも早くキャンプ内で彼の笑顔を見られる日が来ることを祈らずにはいられません。(※息子さんは3月に無事、刑務所から出所しています。しかし、釈放のために家族は高額なお金を払わねばなりませんでした)

自ら作ったドレスをみせてくれました自ら作ったドレスをみせてくれました

この女性刺繍グループは、マイクロ・クレジットのような形式で運営されています。刺繍の作業を行う12名の女性のうち、毎月1名が決まった金額を受け取り、自分の目的のために使用することができます。金利を良しとしないイスラム教的な考えからも、銀行に預けるよりこちらの方法で貯金をすることを好む人も多いようです。刺繍を売って得た売り上げが、彼女たちの自立した暮らしの一部を支えています。

彼女達の刺繍製品は、主にJVCが出るイベント等は売られていますが、JVC東京事務所でも購入が可能です。また、カタログは下記リンクに掲載されています。ぜひ、刺繍を手にとった際には、彼女達のそんな背景も思い浮かべてもらえれば幸いです。

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