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2013年11月26日 【 東エルサレム・保健指導

壁を越えて、私たちにできること

パレスチナ現地代表 今野 泰三
2013年11月26日 更新

皆さん、いかがお過ごしでしょうか?パレスチナは短い秋が終わり、冬に入りつつあります。我が家(パレスチナの家は多くが石造りで天井が高いので寒い!)でも、防寒グッズを用意して、冬支度を始めています。

さて、東エルサレム学校地域保健事業では昨年度、東エルサレムの4つの学校で、「トレーナーのトレーニング(ToT)」という活動を実施してきました。この活動では、保健委員会の生徒たちを対し、学校の衛生環境の改善や、他の子どもたちの健康管理や救急処置、さらに健康教育もできるようになってもらうため、様々なスキルや知識を教えてきました。今年もまた、新たに4つの学校で、このToTのトレーニングを開始しました。

先週、そのうちの1校「マドラサ・バナート・アッラーム(アッラーム女学校)」を訪問し、ToTを受ける保健委員会のメンバーに会ってきました。この学校は、パレスチナ自治政府が運営する公立校で、分離壁によってエルサレムから切り離された「アッラーム(al Ram)」という地域にあります。

学校の様子。国際援助によって建設された新校舎で講習を実施しました。学校の様子。国際援助によって建設された新校舎で講習を実施しました。

このアッラームという地域は、2005年頃に分離壁が建設されるまでは、東エルサレムの商業の中心地として重要な役割を果たしてきました。その町のど真ん中に、突如分離壁が建設されたのです。商店や銀行の大部分が閉店に追い込まれ、かつて栄えた町は急速に廃れました。歩いて通学できた学校や幼稚園も分離壁の「向こう側」になってしまったため、バスを乗りついで軍事検問所を通らずには行けなくなりました。身近に通える店も病院も学校も壁と検問所のせいで遙か遠くなってしまったため、多くの人が他の地に移り住みました。そのため、アッラームの地価は暴落し、家賃も分離壁のエルサレム側に比べると遙かに安くなり、去った人々の代わりに今度は、分離壁のエルサレム側で家賃を払えなくなった人々が移り住んできています。日本では、郊外型の大型シュッピングモールができて、かつて栄えた駅前商店街が廃れてしまうという悲しいケースが全国で多発していますが、パレスチナの場合は大型ショッピングモールではなく、高さ8メートルのコンクリート壁が多くの人々の人生を狂わせています。

エルサレムの軍事検問所で立ち往生する人々エルサレムの軍事検問所で立ち往生する人々
検問所の中の様子。毎日、檻のような狭い通路を通らなければなりません。検問所の中の様子。毎日、檻のような狭い通路を通らなければなりません。

このような状況下にあるアッラームの人々の生活を少しでも改善させ、子どもたちに健やかに育ってもらいたいというJVCと地元パートナ-団体の思いと、受け入れ側の学校の先生方のやる気が合致し、今年はアッラーム女学校が対象校に選ばれました。今回は、第1回目のToT講習ということで、「保健委員会の役割」と「コミュニケーションの大切さ」がテーマでした。講師は、今年から新たに現場医療チームに参加したコミュニケーション・スキルを専門とするラティーベさんです。

今回講師となったラティーベさん(右)今回講師となったラティーベさん(右)

まず、今回が第1回目ということで、講習前に簡単なテストを受けてもらいました。10問程度の3択テストで、内容は栄養や救急法に関するものです。同じテストをトレーニングの開始前と、全てのトレーニングが終わった後に生徒たちに受けてもらうことで、知識向上の度合いを測り、事業の客観的評価と改善に活かしていこうというわけです。

講習の前に、講習の達成度を測るためのテストを受けてもらいました。講習の前に、講習の達成度を測るためのテストを受けてもらいました。

テストの後は、以下の内容の講習を行いました。

1.ToT講習の説明と自己紹介
2.ピア・エデュケーション(同年齢の子ども同士で学び合う方法)の意味と役割
3.コミュニケーション・スキルの基本的知識
4.保健委員会の役割と意義
5.まとめ

2番のピア・エデュケーション(Peer Education)とは、生徒自身が知識と技術を身に付け、同年齢の友人やクラスメートにそれを伝えることで、大人が上から教えるよりも、より大きな効果が生まれるという考え方で、ToTの基本となっています。また、3番目のコミュニケーション・スキルでラティーベさんは、生徒たちが勉強中のアラビア語文法の話を交えることで興味を持ってもらえるよう工夫していました。4番目の「保健委員会の役割と意義」のところでは、保健委員会の大きな役割として、委員会のメンバーは全生徒数の1割近くを占めるので(メンバーは33人で、全生徒数は380人)、学校の中で手洗いや掃除を徹底し、健康に良いお弁当を持って、他の生徒たちがそれを真似するようになれば、大きな効果が生まれると話していました。「だからこそ、あなたたちの責任は大きいのです」というラティーベさんの演説に、なるほど~と納得してしまいました。最後のまとめでは、生徒たちに小さな紙を渡し、今日学んだことを書いてもらい、それを発表してもらいました。

保健委員会の中心となる中学3年生と高校1年生の生徒は、積極的に講習の質疑応答に参加していました。保健委員会の中心となる中学3年生と高校1年生の生徒は、積極的に講習の質疑応答に参加していました。

この学校のToT講習には、本事業のターゲットである中学2年生から高校2年生までの生徒の他に、小学6年生と中学1年生も参加しました(高校3年生は受験勉強で忙しいので不参加です)。彼らは、講習を受けても保健委員会の中心メンバーにはなりませんが、「上級生から学ぶことは多いので、是非参加させてほしい」という学校側の要望で、彼女たちもオブザーバー参加となりました。また、中学1年生は、来年上級生が抜けた後に保健委員会の中心メンバーになっていくということで、今回の講習に参加しました。講習の内容は彼女たちには難しいようで、質問の大半に答えていたのは上級生でしたが、それでも一生懸命理解して、手をあげようとがんばっている姿が微笑ましかったです(少なくとも、拙いアラビア語力しかない私よりは、ずっと理解していたようです)。

講習には、学校側の要望で小学6年生も参加しました。講習には、学校側の要望で小学6年生も参加しました。

ToTの講習自体がすでにピア・エデュケーションの実践となっており、この保健委員会の今後が楽しみです。今後も彼女たちへの応援どうぞよろしくお願いします。

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