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2013年1月26日 【 東エルサレム・保健指導

救急救命法講習

聖都エルサレムの日陰に追いやられたパレスチナで
パレスチナ現地代表 今野 泰三
2013年2月 5日 更新

1月19日(土)、エルサレム旧市街の南側に位置するシルワーン地区で、東エルサレム事業の一環である救急救命法(以下、FA(ファーストエイド))講習会に同行しました。この日の講習会は、地域社会施設「ニブラース・アルクッズ」で夕方4時から開催されました。

旧市街の南に広がるシルワーン地区旧市街の南に広がるシルワーン地区

シルワーン地区には、ユダヤ人が集住する西エルサレムとも、聖地のイメージとも全く異なるエルサレムの姿があります。狭く舗装のはがれた道路の真ん中に置かれた巨大な鉄のゴミ箱からはゴミが溢れかえり、信号がないため十字路では渋滞で車が溢れ、街灯もないため弱弱しく光る家の明かりが唯一の道しるべとなっています。

煌々と街灯が光り、ゴミも落ちておらず、信号もあり、家の光もずっと明るいユダヤ人居住地区と同じ、エルサレム市内とは思えないほどです。これが、イスラエルによって「永遠の首都」と宣言されながら、西エルサレムと同程度の行政サービスは提供されず、イスラエル資本を頂点とするエルサレム地域経済の最底辺に置かれ、貧困率も高い東エルサレムのパレスチナ人居住区の典型的な姿です。

ニブラース・アルクッズ施設長のファリークさんニブラース・アルクッズ施設長のファリークさん

今回講習が行われた施設は、3部屋と台所だけの小さな建物ですが、中は綺麗に掃除が行き届き、日々の活動に参加する住民たちが描いた絵が壁一面に飾られていました。この施設は、耳の聞こえない人や目の見えない人など、特別の支援を必要とする住民のために活動しており、30代後半の強面ですが冗談の絶えない明るい施設長のファリークさんを筆頭に、4人の女性職員と、中学生から20代前半までの15人ほどのボランティアが働いています。

今回のFA講習は、この施設からの要望にこたえて、職員とボランティアの総勢20人を対象に実施されました。彼らが講習を依頼した理由は、地域で重症患者の出た家から助けを求められたり、活動に参加している障害をもつ住民が意識不明になったりするケースが何度かあり、職員とボランティアがFAの知識・技術を習得したいからということでした。また、地域に貢献できることならなんでもしたいから、ということもFA講習を受ける理由として施設長は挙げていました。

JVCと医療救援協会(MRS)が共同で実施するFA講習は全21時間のコースで、この施設では1回2時間の講習を計10日間かけて行っています。内容は、
(1)FAの基本的な知識、
(2)人工蘇生術、
(3)火傷・出血・骨折の処置、
(4)救急箱の使い方
です。21時間の講習終了後には、参加者全員に修了証書が渡されることになっています。JVCももちろん、この証書に署名します。

ラーミー医師のFA講習を熱心に聞く参加者たちラーミー医師のFA講習を熱心に聞く参加者たち

この日の講習会は、人口蘇生術の方法に関するもので、ラーミー医師とドゥアー保健指導員が、蘇生術用の人形とパワーポイントを使いながら講習しました。

ラーミー医師は、午前8時から午後3時までラマッラーの医療クリニックで働いた後に講習にやってきましたが、疲れも見せず、施設長のファリークさんとドゥアー保健指導員とともに、精力的に参加者を引っ張っていました。参加したボランティアさんはみな、施設長のファリークさんを信頼し、FAの技術を身につけたいという強い思いを持っていることが伝わってきました。

人形を使って蘇生術を練習する参加者人形を使って蘇生術を練習する参加者

施設長のファリークさんは、とてもはっきりしたアラビア語を話す方で、一見強面ですが、相手が理解しているかどうかを気遣う、好感を持てる方でした。「日本にはきちんとしたシステムはあるか?ここにはシステムなんてものは何もないさ(笑)」と冗談まじりに話す彼ですが、シルワーン地区のために何かしたいという強い真剣な思いを持っているのを感じました。

今回訪問した「ニブラース・アルクッズ」は、聖都エルサレムの日陰に追いやられた場所にあって、国際社会からあまり注目されることもない小さな施設ですが、そこにも真剣に地域のことを考え行動する人たちがいました。こうした人たちに、FAの知識・技術を身につけてもらうことは、現場の医療チームにとっても私にとっても大きなやりがいの一つになっています。

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