イスラエルによって国際法上違法に併合された東エルサレムは、現在もユダヤ人がパレスチナの土地に住みこむという「入植」が進んでいます。前にお伝えしたシェイク・ジャラの他にも、強制退去・家屋破壊を伴う入植が進んでいる地区はいくつも存在します。今日はそのひとつであるシルワンという場所で、現地パートナーNGOの医師が救急法講習に出かけました。対象はここに住む女性たちです。数回に分けて行う講習の初回である今日は、けが人・病人が出た場合に、どのように症状を見て、どのように対処すべきか、ということに重点が置かれました。

講習を行ったコミュニティ・センターは、現在シルワンが置かれている状況を知らせる情報の発信元にもなっています。僕はセンターの男性から最近の状況について話を聞くことにしました。
シルワンにあるアル・ブスターンという地区は、イスラエルが管理するエルサレム市により、公園やなどの敷地として使うための「緑地」として指定され、そこにある88軒の家に強制破壊命令が出ています。この命令が執行されれば、今日にでも1500人のパレスチナ人が家を破壊され、路頭に迷うことになります。彼らはイスラエルという国家ができる前からここに住んでいましたが、今から約3000年前にあったとされるダビデ王の町がここにあったこと(実はこれも定かではないですが)を理由に、行政判断として立ち退きを迫られています。表向きは遺跡発掘のためですが、ユダヤ人入植者がシルワンに住みつき家を建て、その屋上には常に重装備の警備員がおり、辺りをうかがっています。エルサレム市は、ここのパレスチナ人の住居が、市の建築許可なくして建てられた国内法上の違法建築に当たるとして、強制破壊命令を正当化しています。しかし、入植者の家のいくつかは、パレスチナ人の家屋同様、国内法上違法に建てられています。それなのに、彼らに家屋破壊命令が出ることはありません。さらに、そもそもシルワンを含む東エルサレム全土は、国際法上はイスラエルが違法に併合・占拠しているため、この家屋破壊命令は全く国際法上の根拠がないものであると言えます。
センターの男性は、すでに破壊された家に連れて行ってくれました。センターから歩いて5分、家具も一緒に瓦礫と化した家が姿を表します。そこで、現在同じく破壊命令が出ている家に住む男性に出会いました。
「家っていうのは、仕事や学校から疲れて帰ってきたときに気分を休める場所であるべきなのに、破壊命令が出てから、いつこの家が壊されるのかという恐怖に怯え、家と呼べる存在ではなくなってしまった」と男性は言います。
センターの男性によると、最近の主な出来事は、イスラエルの国境警察がこの付近に住む少年たち(12歳以下)の子ども約80人を逮捕し、1日間拘留したということです。逮捕理由は、警察に石を投げた、などの罪だったそうです。今日健康教育の講習を受けた女性に、子どもを逮捕された人がいますかと聞くと、約10人のうち4人が手を挙げました。
センターの男性は、もし家屋破壊が本格的に進めば、インティファーダ(民族蜂起)がここから始まると言います。一見落ち着いて見えるエルサレムは、良く見てみると爆発を待つ火薬庫のようです。皮肉ですが、今日のような応急処置の講習が、無駄に終わることを願います。
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