MRS(医療救援協会)の学校での診療。今日はエルサレム市内のオリーブ山と呼ばれる地域にある私立校です。幼稚園から小学4年生までの約500人が通い、そのうち約200人が小学1年生です。この全ての一年生に健康診断を行うのは大仕事。今日は初日ですが、早速40人ほどの子どもたちが待っています。一年生に対して健康診断を行うのは、見逃されがちな慢性疾患などを早期発見し早期治療につなげるという目的があります。

この学校にはヨルダン川西岸地区からも約100人の子どもたちが通っています。中には、父親の仕事の関係で西岸に住んでいるケースや、分離壁の建設によって村が分断され、エルサレム居住権を持ちながらもエルサレムから隔離されてしまったケースもあるそうです。西岸側から来る子どもたちは、入植地の横を通り検問所を抜けてスクールバスで通学しています。
「どうして毎日大変な思いをさせてまで、子どもたちの親はエルサレムの学校に通わせたいの?」と聞くと、「西岸側にもいい学校はあるけれども、それでもエルサレムまで通うのは、子どもたちが将来取得するIDのためなのよ」と校長先生が言います。子どもがIDの取得手続きを行うのは16歳。その時に、エルサレム市内の学校に通っていたという証明書を提示できなければ、いわゆる「エルサレムID」と呼ばれる、エルサレムの居住権があること示すIDを取得することができないのです。
学費は一年間で2,000シェケル(約5万円)とのこと。一方、この学校の通りを挟んで向かい側にあるイスラエルの公立校は、学費が100シェケル(約2,500円)。しかし、「東エルサレムにあるイスラエルの公立校では、先生が生徒を十分にケアしない。中退してしまう子どもも多いので、親はみんな学費がかかっても私立校に入れたいと思うわ」と、この学校の先生は言います。
この学校ができた45年前、周りにはイスラエル公立校以外の学校がなかったそうです。これまでなるべく多くの子どもたちを受け入れようとしてきましたが、今は教室数が足りなくなり、これ以上子どもを受け入れられない状態です。増設をしたくても、新しい教室等の建設にはイスラエル政府の許可が必要で、その許可を取るのはとても難しいそうです。東エルサレムの学校・教室不足は深刻で、イスラエルのNGOによると現在すでに1,300以上の教室数が不足しており、多くの子どもたちが学校に通うことのできない状態
が続いており、人口の増加にしたがってこの状況は悪化する一方であるとのことです。

さて、今日は39人診察して、心雑音とみられるケースを1件、病院に照会した以外は特に子どもたちに病気等は見つかりませんでした。この学校の子どもたちは、身だしなみなどきちんと清潔に保っているようです。ラムジー先生は、一人一人の子どもたちを診察する時、子どもたちとたくさん話をします。おうちのこと、家族のこと、勉強のこと、そして衛生面について。爪が清潔でない子どもには、きちんと爪を切って手を洗うように、虫歯の子にもご飯の後にはきちんと歯を磨くように指導をします。

そして、保健指導員さんがしらみの検査と、身長・体重測定を行います。一人一人の診察には時間がかかるのですが、丁寧に子どもたちと接するラムジー先生は、どこに行っても子どもたちの人気者です。休み時間には、診察を行う部屋の前に多くの子どもが押し寄せてきました。この中から、将来医師を目指す子が出てくるでしょうか。西岸から毎日通ってくる子どもたちも、無事に、楽しく勉強を続けられることを願います。
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