東エルサレムで一緒に活動しているNGO「医療救援協会(MRS)」の医師らと一緒に、今日はJVCの事務所からもほど近い学校へ巡回健康診断に行きました。

6歳から15歳までの子どもが通うこの私立男子校は、4階建ての校舎を持つかなり立派な学校です。生徒数は250人。この日健康診断を行う生徒は6、7歳の28人です。
職員室などがある1階から健康診断に使用する2階に上がると、中はがらんとしていて、二段ベッドのある部屋がいくつもあります。「お金持ちの子どもがここで寄宿舎生活でもしているのかな」と思い、その時はあまり気にもしていませんでした。医師たちが身長・体重測定や視力検査などを開始し、僕は学校の校長先生からここの生徒たちの現状について聞き取りを始めました。
話を聞いて驚きました。この学校は1948年に孤児院として設立され、去年まで60年間、ヨルダン川西岸地区の孤児を受け入れていたということです。1967年からノルウェーの団体が3階以上を増築し、ここ周辺の子どもたちも通える学校にしたとのこと。そしてあのがらんとした2階はと聞くと・・・
「去年まで西岸から来た66人の孤児があそこで寝泊まりしていた。しかし、今年に入って検問所の通過が厳しくなり、誰もここまで来られなくなってしまった」
「でもどうして?」
「イスラエルはパレスチナの子どもが勉強して大臣になる前にその可能性を潰したいんだろうな。今は小さな子どもですら出生登録証を検問所で見せなければならない。10歳や11歳にもなると名前を検問所のリストに載せて毎回通過を阻むんだ。親がエルサレムのID※を持っていればまだいいが、孤児となると不可能に近い。見ただろう?2階のベッドを。今でもまだ彼らが去ってからそのままにしてあるんだ」(※エルサレム市内に居住権があることを示す身分証)

今年からここは本来の機能をなくしたまま学校として多くの子どもたちを受け入れています。子どもたちの笑顔と元気いっぱいの声は、悲しい現実すらも隠す勢いを持っています。ただ眼に見えるものだけを見ていては、パレスチナの本当の現状はわからないということを痛烈に感じました。教育に熱心な先生がいくらいても、子どもを受け入れるキャパシティがいくら大きくても、東エルサレムを取り巻く分離壁と検問所が、そこに子どもたちが到達するまでの「アクセス」を分断し、教育を不可能なものにしています。
「孤児の子たちはどこに行ったんですか」
「わからない。これが現実だ」
僕はさっき見た場所と全く違って見える2階に戻り、わずかに残った生徒が健康診断を終えるのを待ちました。
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