東エルサレムの旧市街の中にあるハラム・アッシャリーフ(アラビア語で「高貴なる聖域」)と呼ばれる区域には、岩のドームやアルアクサ・モスクがあり、イスラム教徒が管理する聖地となっています。一週間ほど前、この場所にユダヤ教徒と見られる人たちが侵入し、彼らを守ろうとするイスラエル警察とイスラム教徒の間に衝突が発生しました。30名が負傷するこの事件があってからというもの、エルサレムは緊張感に包まれています。
この日は金曜日。イスラム教徒にとって金曜日の正午に行われる礼拝は重要で、多くの人が旧市街にあるモスクを訪れます。しかし、今日は旧市街に通じるいくつかの道が封鎖されたほか、旧市街の門という門にイスラエルの警察と国境警備隊が張り付き、何重にもわたって人の出入りを制限していました。この日は女性と50歳以上の男性以外は中に入れないとのことです。

それでも正午が近づき、結局中に入れなかった人たちは警察のバリケードの前の道端で礼拝を始めました。ちょうどメッカの方向がバリケードの方向と一致していたのか、はたから見るとイスラエル警察に向かって礼拝をしているような異様な光景です。聖地へのアクセスすらも自分たちには許されていないイスラム教徒の人たちは、この不条理な状況に耐えることしかできません。
翌日、JVCが東エルサレムで一緒に活動しているNGO「医療救援協会(MRS)」の医師と、学校の先生たちを対象にした新型インフルエンザに関する健康教育の出前授業に出かけました。授業を行う場所に行くまで医師の口からこぼれるのもどうしても愚痴ばかりになってしまいます。
「イスラエルが勝手に道を封鎖したりするから学校のスケジュールが混乱して巡回診療の予定すら立てられないんだ」
「昨日なんて保健省とエルサレムで会議があったのに結局行けなかった。今日だって遠回りして事務所に来たんだ」
「今年はラマダン(イスラム教の断食月)が学期の始まりに重なっていたからただでさえスケジュールが遅れているのに、これ以上邪魔されたらたまったもんじゃない」

そんな毎日の東エルサレムですが、授業の会場には17人の女性教師が集まり、「新型インフルエンザとは」「感染の方法」「感染状況とまん延の経緯」「症状と対処方法」「予防方法」「感染拡大防止のためにコミュニティで取り組むこと」など、医師の詳しい説明を熱心に聴いていました。一通りの説明の最中、そして終わった後にもたくさんの質問が出て、皆で理解を深めていました。終わった後に話を伺うと、「すごくためになった」「またこういう機会がほしい」「この時間帯だと来やすくていいわ」など、ポジティブな感想をたくさん聞くことができました。
一寸先も見えない緊迫した状況の東エルサレム。これから来る冬に備え、新型インフルエンザが泣きっ面に蜂のようなものになることだけは何としても避けたいと思います。ここで授業を受けた先生たちがまん延を防ぐことに一役買ってくれることを願います。
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