メーラブ・ハーンさんの話をしたい。彼は自分と同じホギャニ郡の出身で、僕らは今からもう20年以上前に知り合った。タリバンが政権をとっていた頃だ。彼の住む村は特に山間地だったからメーラブさんはそこで採れる木を建材として売る仕事をしていて、とてもいい暮らしをしていたんだ。皆そう言ってた。そんなに頻繁に会うことはなかったけど、幸せそうだった。
その後、僕たちの国では、政権を引きずり降ろされたタリバンと新たな政府との間での戦闘が続いていた。ある時、メーラブさんの仕事を引き継いだ息子さんが、馬に木材を載せて運んでいたところ、運悪く戦闘に巻き込まれ、銃撃を受けて殺された。メーラブさんは大事な息子をそうやって亡くしたんだ。さらに、彼の故郷は「IS」を名乗る勢力に支配され、戻ることができなくなった家族はIDP(国内避難民)として、ここジャララバード市内のどこかで暮らしているということだった。
昨日、僕が車の修理工場に立ち寄ったとき、メーラブさんにばったり再会した。車の修理をしていると、ふいに「お金を恵んでくれませんか」とおじいさんに声をかけられ、よく見るとそれが彼だった。彼は僕だと分からないようだった。豊かに暮らしていたメーラブさん、今はこうやって物乞いをすることでしか、生きていけない状況に・・・。誇り高い彼は、そんな姿を知り合いに見られたくはないだろうと思って、僕はとっさにホギャニではなく、クナール出身だと言った。でもなんとなく、自分だと気づいたんだと思う、メーラブさんはもう何も言わず、引き返して去っていった。
メーラブ・ハーンのような人々が、アフガニスタンは一体どれだけいるのだろうか。
サビルラ・メムラワル 執筆(加藤真希/翻訳・編集)