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声明

JVC、ガザ復興支援で守るべき原則を確認する共同声明に署名

パレスチナ現地代表 今野 泰三
2014年10月14日 更新

2014年10月12月、エジプトの首都カイロにて、ガザ地区(以下、ガザ)の復興支援を協議する国際会議が開催され、日本政府は2000万ドルの追加支援を約束しました※注(1)

この会議の開催を受け、JVCなどパレスチナで活動する国際NGO約80団体が加盟する連合体、AIDA(Association of International Development Agencies)は、10月3日に共同声明を発表しました。JVCは現地での支援を通じ、ガザの破壊を再度起こさせないためのメカニズムが必要であると強く認識しており、そのためには、復興のために支援金を出すだけでは十分ではなく、封鎖解除、人権の保障、国際法違反に対する責任の追及なども求めていくことが必要不可欠だと考えています。そのため今回、以下の共同声明に署名しました。

ダウンロードできるデータ
Reconstructing Gaza : Five Principles for Transformative Change / An AIDA Policy Paper (PDF, 190kB)

共同声明の要点

  1. ガザの現状は、単なる人道的危機ではなく、政治レベルでの失敗に起因しており、復興支援だけでは解決できない。ガザが、他のパレスチナ披占領地(ヨルダン川西岸地区および東エルサレム)から分離され、ヒトとモノの移動が制限される限り、いかなる復興支援も、ガザのパレスチナ人のニーズを満たすものとはならない。支援効果を高め、援助依存を減らすためにも、ガザへの復興援助は、国際法および人道支援の諸原則に沿って実施されなければならない。
  2. ガザと東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区(以下、西岸)は、いまだイスラエルに占領されたままである。よってイスラエルは、占領者としてパレスチナ人に福利厚生を提供する義務があり、それを行う意思または能力がない場合には、国際支援の自由な搬入を許さなければならない。にもかかわらずイスラエルは、ガザでの人道・開発支援を厳しく制限してきた。現在、ガザでは8万9千戸の住宅建設※注(2)が必要とされるが、イスラエルによる物資搬入の制限が続く限り、8万9千戸の住宅建設に必要な建設物資を搬入するだけでも18年間がかかると試算される。
  3. イスラエル政府、国連、パレスチナ統一政府が2014年9月に暫定合意した、ガザへの物資搬入を監視する仕組み※注(3)が、ガザ内で緊急に必要とされる家屋・学校・病院や水道・電気網の復旧を早める可能性は低い。さらに大きな問題は、この仕組みが、貧困と紛争の原因である封鎖と人権の否定に対処するようには作られていないことである。封鎖の完全な解除を伴わない復興支援は、ガザの人々を閉じ込めた刑務所を再建するようなものであり、ガザと西岸を領土とするパレスチナ国家の実現もさらに遠のく。
  4. 全ての国際支援団体は、ガザ支援に際して、以下の5つの諸原則に従わなければならない。これらの原則に反する事業は、ガザの現状を変える持続的な効果をもたらさないことを認識し、そうした事業は実施・支援・許可すべきではない。
    1. 領土一体性の原則
    ガザと東エルサレムを含む西岸は、法的に一つの領土である。よって、ガザ支援はパレスチナ自治政府の開発計画(PNDP2014-2016)※注(4)の一部として、パレスチナ国家の主権と自決、および2国家解決案の実現を目指した枠組みの中で実施されなければならない。イスラエル政府と国際社会は、パレスチナ統一政府が再統合を達成するために必要な権限を与えねばならない。パレスチナ統一政府は、西岸・ガザ間の政府職員の自由な移動とガザでの政府職員への給与支払が、再統合をもたらすうえで効果的であると表明しており、支援実施者はそのための支援をすべきである。
    2.違法な封鎖の否定
    イスラエルによる過去7年間のガザ封鎖は、ガザ経済を機能不全にし、パレスチナ人同士を分断し、西岸・ガザに2つの分裂した政治・社会・法的制度が作られることを許してきた。封鎖は、国際法で禁じられた集団懲罰であり、国際支援団体は、国際法で定められた第三国責任※注(5)において、さらなる援助を提供する前に封鎖解除を求めることが義務づけられている。国際社会は、10月のカイロ会議に続き、イスラエルが封鎖を緩和しているかどうかを測るための明確なタイムラインと指標を設定し、封鎖解除に向けた大きな進展があったかどうかを判断すべきである。たとえ封鎖によって復興が進まず、建設物資の搬入を監視するメカニズムが機能しないことが判明しても、国際社会は2009年のガザ攻撃後のような過ちを繰り返してはならず、そうした状況を黙認すべきではない。
    3. 民間人の保護
    パレスチナ人民間人の安全と権利の保障、およびイスラエル人民間人の安全は、敵対関係を永続的に終わらせるうえで必要不可欠である。よって、ガザ復興に関わる支援実施国は、全ての紛争当事者に対し、戦争犯罪、人道に対する罪、および国際人道法の違反に関する調査と責任追及を行なわなければならない。また、支援実施国は、独立調査団の現地派遣と、国連安保理によって権限を与えられた機関によるガザ・西岸での住民保護の実施を支援すべきである。
    4. 地元資源の活用
    ガザの復興支援は、パレスチナ経済を再建し、国際援助への依存を減らすために必要な民間部門の発展と地元労働力の能力・権限の強化を目標に据え、ガザと西岸の人材と資源を最大限活用し、パレスチナ内での交易に対する障壁の撤廃と、ガザと西岸の間で商品を送るための通行路の開設に力を注ぐべきである。パレスチナ人を主体とする復興支援を実現するための第一段階として、東エルサレムIDまたは西岸IDを持つパレスチナ人が、妨害されることなくガザに入域できるようにすべきである。
    5. 説明責任
    ガザ内の民間施設および国際支援で建設されたインフラが破壊されることを防ぎ、同時に、国際法に違反した者に利益をもたらさないためのメカニズムを作るべきである。それは、国際法違反に対する責任の所在を明らかにし、免責特権を生じさせないために必要な処置である。具体的な処置としては、イスラエルの攻撃で被った損害を記録すること、ガザ内で破壊された財産や事業に対するイスラエルの責任を追及すること、イスラエルの攻撃によって被った損害額とイスラエルが免税や借款補償などを通じて得る金銭的利益を関連付けること、復興支援の一部としてガザに搬入されるイスラエル製品に対して特別な課税を課すことなどが考えられる。また、復興支援を行う実施国は、占領地での入植地と壁の建設や採石などの人権侵害に関与する企業から物資やサービスを調達することがないように配慮すべきである。

※注(1) 毎日新聞2014年10月12日
※注(2) うち、2014年7月のガザ攻撃によって破壊されたか居住不可能となった家屋は1万8000戸で、残りの7万1000戸はそれ以前から不足していた住宅数である。
※注(3) メカニズムの概要(英語)はこちらで閲覧が可能。
※注(4) 計画は、こちらのサイトで閲覧(英語)が可能。
※注(5) 国際法の重大な違反に対する第三国の責任については、ジュネーヴ第4条約やResponsibility of States for Internationally Wrongful Actsで定められている。