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TiQNoKo レ・ロマネスク TOBI ×JVC谷山対談

2016年3月 9日 更新

2015年7月、JVCは、世界的ポップデュオのレ・ロマネスクと、『TiQNoKo(チキュウノコ)プロジェクト』を立ち上げました(詳細はこちら)。プロジェクト始動にあたり、JVC代表の谷山と、レ・ロマネスクのメインボーカルTOBIさんの対談が実現! 大学院生時代、現実の世界とバブル真っ盛りの日本の状況とのギャップに悩み、海外に飛び出した谷山と(当時の話はここでも詳しく)、幼少期は広島県比婆郡(当時)で育ち、大学卒業後社会人を経て、フランスに飛び出したTOBIさんの共通項は、「平和」への強い想い。そのほか、「国際協力」に対するスタンスの部分でも大きく共通する部分があったようです...。異色の対談、ぜひご一読ください!

谷山

レ ロマネスクさんは、2000年にフランスで結成されて欧州を中心に様々なクラブシーンやフェスティバルなどで活動されてきたのですよね。最近では、NHK Eテレの小学生高学年向けの国語の番組『お伝と伝じろう』にもメインキャストとして出演されている。本当に幅広い分野で活躍されているんですね。

TOBI

はい、おかげさまで幅広い層の方々に応援いただいています。

谷山

本当のところを言うと、最初この企画の担当者が話を持ってきたとき、心底ぎょっとしたんですよ。あのビジュアルを見て、何なんだ、この人たちは...と。

TOBI

それは、当然の反応だと思います(笑)

谷山

でも、実際に何度かお会いして話をするたびに、お互い見た目は違っても、何か共通する哲学のようなものを感じたんです。

TOBI

僕たちもそうです。何かこう、JVCさんとなら面白いケミカルが作れるかもしれない、と思いました。

谷山

TOBIさんはあまり僕のことを知らないと思うので、まずは自己紹介させてください。そもそも、80年代に遡るのですが、大学院にいた時に、ずいぶん思い悩んでいて...。

TOBI

何をそんなに思い悩んでいたんですか?

谷山

現実の世界と当時バブル真っ盛りの日本の状況とのギャップに悩んでいました。なんか自分をうまく処理できなかったんです。で、とにかく日本を離れてフィリピンのミンダナオ島に行ったのですが、そこでシージプシーという海上で暮らす貧しい人たちに出会ったんです。そこで驚愕したのは、若い日本の観光客たちが、そのシージプシーの人たちに向かってコインを投げて喜んでいるんですよ。まるで、池の鯉にエサを投げ与えるように。シージプシーの人たちは投げられたコインを必死になって拾おうとする。それ見て喜んでいる光景を目の当たりにして心底ショックを受けたんです。

TOBI

それはショックですね。

谷山

人間同士として出会ってるにもかかわらず、まったく接点がない。すごくショックでした。それが30年前のことで、その頃日本にはNGOがほとんどなかった時代ですが、その不条理をなんとかしたくてJVCに関与するようになり、以来、現場を中心にずっとこの畑でやってきました。

TOBI

なるほど。少し話は変わるのですが、僕は子どものころ、すごい田舎に住んでいて、都会の人との違いをものすごく感じながら育ってきました。

谷山

そういえば、広島県比婆郡のご出身でしたね。

TOBI

はい。過疎の町だったんですが、僕が子どものころに「ヒバゴンブーム」が起こったんです。

谷山

ヒ、ヒバゴンブーム?

TOBI

はい、類人猿のような謎の生物で、僕の住む田舎の町で目撃者が次々とあらわれ、日本中でヒバゴンが話題になり、メディアが押し寄せたことがあったんです。町役場に「ヒバゴン課」という部署が立ち上がり、ホテルが2件も建つというような大騒ぎでした。

谷山

はあ、そういえばそんなことがあったような...。

TOBI

で、メディアが撮りたがるヒバゴン生息地で生活している子どもっていうのが、いわゆる「田舎の子ども」なんですよね。虫取り網持ってランニングシャツと短パンを履いて、裸足で駆け回り、崖の上から川に飛び込む、といった都会の人たちがイメージする「田舎の子ども」を演じなければならなかった。毎日のように「ちょっと そこの山道を裸足で走ってくれる?」と頼まれてすごく傷ついたんです。実際には 川は急流だし、山にはマムシがいるし、ましてや裸足でなんて、危険過ぎます。

谷山

それって、まさに先進国の人たちが途上国の人たちに期待したいイメージと同じですよね?

TOBI

そうなんですよ、ランニングシャツなんて着たくないし、カブトムシなんて毎日夕食に飛び込んでくる「イヤな虫」だから大嫌いだし、どちらかと言えばじっと本を読んでいたい子どもだったんです。でも、親戚の子どもが都会から遊びに来るたびにそういう「田舎の子ども」を演じなければならないことにうんざりしていました。

谷山

そういうふうに、ステレオタイプで決めつけられるのが嫌でフランスに行ったんですか?

TOBI

いいえ、今でもステレオタイプで決めつけられることに抵抗感はありますが、フランスに行った理由ではありません。僕の子どものころの将来の夢はサラリーマンになること、または高給取りになることだったんですが、大学を卒業して就職した会社がなぜか立て続けに潰れて、ある日ハローワークで就職を探していたら「フランスでワーキングホリデー開始」という情報を見つけたんです。

谷山

ハローワークで?...もともとフランスに興味を持っていたんですか?

TOBI

いいえ、ぜんぜん。もともとすごい過疎地出身なので、東京の大学に進学した時点で異国に留学したくらいの感覚だったので、あまり海外に興味なかったんですよ。フランスだって別に好きでも嫌いでもありませんでした。ただ、その時は入る会社が次々に潰れるものだから、一度すべてをリセットするつもりで、これに応募したんです。

谷山

なるほど。それじゃ、フランス語などもまったくできないまま渡仏したんですか?

TOBI

まったく。出発の直前に、ゴールデンウィーク集中フランス語講座というのに参加したのですが、その講座は、発音のしかたについて口や舌の形をくり返し練習するという発音矯正の講座で、一つの単語も教えてくれませんでした。

谷山

えっ?

TOBI

まあ、今となっては、15種類以上もあるフランス語の母音の細かな違いや、Rなどの難しい子音の発音について集中的に訓練できたことが、歌うときに役に立ったんですが(笑)



谷山

大学を卒業されて、就職する会社が次々と潰れ、そして一つの単語も知らないでフランスに渡ることになったんですね。それでも、フランスでレ・ロマネスクというポップデュオを結成され、「フランスで一番有名な日本人」と言われるまでになった。すごいことだと思います。でも、いろいろとご苦労もあったと思うのですが。

TOBI

フランスは、フランス語に関してはかなり保守的な国です。新たな単語が現れたときにフランス語として認めるかを審査するアカデミーフランセーズという機関が、ルイ13世の時代から残っており、伝統的なフランス語を死守しています。そして、良くも悪くもフランス文化はフランス語そのものです。音楽でも映画でも、フランス語でなければ成立しないような作品がやはり好まれます。くだらないB級ものは作れない。

谷山

ではなぜ、レ・ロマネスクが成功したんですかね?

TOBI

けっきょくフランスで一線を外れて面白いことやっているのは、外国人なんですよ。ファッション業界でもエッジの効いたデザイナーはすべて外国人。ただフランスには、外国人がフランスブランドを使って面白いことをするのを受け入れる素地がある。音楽業界でもフランス人ってプライドが高いので道化的なことができない。僕らはそこにニッチ市場を見出したんです。

谷山

なるほど。ところで、フランスにいる頃から社会貢献に興味があったのですか?

TOBI

そうですね、僕たちもフランスで社会貢献したかったのですが、けっきょくフランス流のやり方でしか社会貢献できないことに違和感を感じていたんです。

谷山

それはどういうこと? 欧米は社会貢献の考え方は進んでいると思うのですが。

TOBI

一般的にフランス人は、移民にも観光客にもフランス語さえ話せばリベラルであろうとします。ほぼ全員博愛主義者と言ってもいいと思います。自分がインテリであるステータスとして、恵まれない人々に慈善事業を行うのが当然になっているのも確かです。でも、フランス的な慈善事業の多くは、良くも悪くも「可哀想な者に施しを授ける」という考え方が基本で、上から目線の部分があるかもしれない。「施しができる自分を誇りに思う」っていう考え方で社会貢献しているのだとしたら、それは僕たちのスタンスとは違うのかな、って思っていました。

谷山

なるほど、それは大事な視点だと思います。欧米のNGOには、いま言われたような形の原理のようなものが流れている。そのことには敬意を示したいと思います。しかし、僕たちJVCのように現場を知っている国際協力NGOからすると、ちょっと考え方が違うんですよね。そもそも敗戦を経験した国で始まったNGOですから。だから僕たちはなるべく「支援」という言葉を使いたくない。

TOBI

僕たちもフランスではガイジンなので移民法が適用されるんですが、サルコジが内務大臣の時に、移民を大量に帰国させる公約のせいで追い出されそうになったことがあります。「日本は政情が安定している。両親は健康で住む家があり、行方不明や路上生活などではないから、1カ月以内に両親の元へ帰れ。さもなければ不法滞在になる。不服なら訴えろ」というむちゃくちゃな通知が来たんです。2006年の上半期に同じような通知をもらった日本人はたくさんいました。日本だろうがどこの国に帰そうが移民を帰国させたという実績になりますから。
裁判を起こしても事態は好転せず、いよいよ強制送還か?って局面で、ファンの方々の署名を集めて、旧パリ市長に直訴したところ一筆手紙を書いてくれ、なんとか送還されずにすんだのですが、その時に気付いたのは、移民を追い返す窓口の人たちもみんな移民なんですよ。政府としては、移民に仕事を与えたということなんですが、実際は移民の仲間たちから最も嫌われる「移民を送還する仕事」なんです。

谷山

へえ、それはかなり政治的な偽善ですね。本当の慈善活動って人間対人間のリスペクトを基本とするべきだと、僕は思いますけどね。

TOBI

そういう意味で、日本人って、相手をリスペクトした関わり方って得意だと思います。日本人は八百万の神を奉るし、大みそかも、正月も、節分も、クリスマスも、ハロウィンも、バレンタインも祝うという、節操がないと批難する人もいますが、僕はそれぞれの祭りをリスペクトして受け入れながら独自のお祭りにしていて、素晴らしいと思いますね。いろいろな文化や考え方を受け入れる素地があると思います。それに、日本人は人の話を聞く能力に長けていると僕は思います。だから、支援っていうよりも、「一緒に寄り添う」というやり方ができるんじゃないかと思います。

谷山

なるほど。日本人の資質を生かした国際協力のやり方があると...。たしかに、危険な場所で安全を確保する欧米系のNGOのやり方は、まず武装するとか金をかけて施設を守る、なんです。でも、日本のNGOは「受容」、つまり住民に受け入れられることなんです。

TOBI

確かに緊急支援のときは、大きな団体がどかーんと支援物資を運ぶことも必要ですけど、その後、そこの人々がきちんと自立するまで心の交流を基礎にして応援していくJVCのやり方って素晴らしいと思います。まさにそこがクールジャパンですよね!

谷山

ありがとうございます。僕たちが現場にとことんこだわるのは、まさにそこに暮らす人たちとそういう関わりあい方をしたいからなんです。でも、9.11を境にして、本当にいろいろな問題が出てきました。9.11は、テロリストは根絶やしにすべきというテロとの戦いを正当化することにつながり、それが現在のISのような暴力の連鎖を生んでしまった。その背景には、大資本による搾取や経済的・社会的格差の問題、宗教対立の問題、様々な要因があるのですが...。

TOBI

たしかに9.11には僕も相当ショックを受けました。僕もテレビでリアルタイムで見ていましたが、本当に信じられないと思いました。あれから世の中が変わってしまったような気がします。

谷山

人間って、敵と味方に分かれると、ものすごい恐怖心に追い詰められる。だから戦うしかない。恐怖心の中では相手が見えない。目の前の敵を殺すしかない。9.11が生みだした戦いには終わりがないんですよ。僕たちもに日本のNGOとして、敗戦の痛みを知る人間として紛争地で活動しているけど、いつどこで武装勢力が生まれるか分からない。そういう状況の中でどうやってスタッフの命を守るか、ということに心を砕いています。

TOBI

みんな、ひとりひとりが「地球の子」なのに...。

谷山

また、行きすぎた資本主義にも懸念を抱いています。特にTPPのような経済の行きすぎたグローバル化や、日本の経済成長を目的とした ODAなどは、国際人権や環境の観点からも、注視する必要があると思っています。日本にはその昔、「藩」という地方自治システムがあったからこそ、地方文化が花開いた。僕が懸念するのは、グローバル化という名前のもとに、圧倒的な資本の力で各国の地域に圧力をかけていることなんです。大資本が環境や住民自治の法律にも影響を与えかねないんです。

TOBI

僕は資本主義そのものを否定するつもりはまったくないのですが、行きすぎた資本市場主義ってこわいと思います。お金はパワーですから、パワーが集中しすぎると理不尽なこともできてしまいますよね。ODAだって、本来は援助先の国の住民を幸せにすることが目的のはずなのに、先進国の論理で援助することによって支援する国の経済成長などの「見返り」を期待するのは、本来のODAの社会的責任から離れている感じがします。

谷山

あのね、JVCの新しいスローガンが、「世界から中心をなくそう。」というんです。スタッフで散々議論して、つい先日決めたんですよ。JVCは活動現場のニーズに合わせて、いろいろな活動をしているから、何をやっている団体かよくわからないと言われることが多いんです。でも、このスローガンは僕たちがやっていることのすべてを表現している。

TOBI

すばらしい。文化も世界のメインストリームでは生まれないんですよ。アートはメインストリームから外れたところで生まれるから、僕たちもそこで活動しているわけで、中心があれば中心じゃない部分もあるから面白いと思うんです。例えば、『男はつらいよ』の寅さんが、ハーバードビジネススクールのMBAコースで学んだフランチャイズ理論を駆使して儲けちゃったら、これはもうまったく面白くないじゃないですか。決してメインストリームには行かないで、その日暮らしの金を稼いでいるから、映画として成立しているんです。

谷山

ところで、先日お会いしたとき、歌って踊るという形の非日常をカンボジアの住民に経験してもらいたいっておっしゃったでしょ?あれがとても印象的でした。

TOBI

はい、みんなの心を開放して腕を上げてもらうことが僕たちの仕事だと思っています。手を肩より上の位置へ上げて踊ることができるのは、安心しているからこそです。不安なときは、人は自然と心臓の前あたりに手を置いて萎縮しますよね。レ・ロマネスクも最初はいろんな色の服を着てステージに出ていたのですが、だんだんピンク色になってきたんです。ピンク色は一瞬で相手に安心感を与えられることに気づいたからです。ステージに出た瞬間に「この人たちは危険ではない」と観客に思ってもらえる。僕たちのピンク色は、そうやって進化してきたのです。

谷山

「愛と平和」を活動テーマにしているというのは、そういう深いブランディング化でもあるんですね。

TOBI

そうです。肩より手を高く上げて踊っている状態が「平和」そのものであり、「平和」って本当に楽しいねって思ってほしい。だから僕たちの楽曲はすべて下から上に上がっていくメロディラインで構成されているのです。心が開放されるように。

谷山

心を開放するってとても大切だと思います。みんなカラをかぶっているので、戦いになる。それは人間同士もそうだし、国と国もそうだけど、「そもそもみんな同じ地球という星の住民じゃないか」ってメッセージを音楽に乗せて一瞬で届けるってすごいことですね。これがまさに「Ti-Q-No-Koプロジェクト」の意義だと思います。

TOBI

僕も、平和についていろいろと日頃考えていたんですけど「地球の子」というフレーズが自然に降ってきました。このプロジェクトを契機に、この星が少しでも平和になってくれたら本当に嬉しいです。

谷山

今後の展開が楽しみです。こうして異質なもの同士が出会ったからこそ発揮できるパワーで、未来の子どもたちのためにも、「うたって、おどって、わらって、ちきゅう、はっぴー!」と言える世界にしたいですね。

(完)

★TiQNoKoプロジェクト始動!

  1. カンボジアでのプロモーションビデオ撮影!
  2. 常夏のカンボジアロケを終え、日本ロケへ
  3. TiQNoKoコーラス隊結成!
  4. 『TiQNoKo』が在日カンボジア王国大使館に!
  5. 『TiQNoKo』CDジャケット完成!
  6. 3月5日(土)読売新聞夕刊に掲載されました