このブログ記事を開いていただきありがとうございます。KOREAこどもキャンペーンインターンの玉村です。
新型コロナウイルスの感染拡大の中、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
本記事では、2020年の秋に感染対策を講じて行った大久保地域フィールドワークについて報告致します。
今までなら通り過ぎてしまうような繁華街にどんな歴史の爪痕が残されているのかを講師の方に解説して頂き、共に考えながら、立ち止まり、寄り道してきました。 本記事がいつもの散歩道や通勤・通学路の教えてくれる知らない世界に飛び込むきっかけになればと思います。
東北アジア大学生平和交流プログラムとは
東北アジアの平和を構築するために、交流だけではなく、年間を通して勉強会・フィールドワークも実施するものですが、2020年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて交流はかないませんでした。しかし、その中で、学生たちは、日本と朝鮮半島に関する歴史や在日コリアンが置かれている状況を知り、日朝関係・日韓関係の問題点について学んでいます。
繁華街の光と影
人通りの少ない朝の新宿から私たちのフィールドワークは始まりました。2020年度の関東のメンバーにとっては初めての対面の場であり、また、長くオンライン授業で自宅に閉じこもっていた大学生にとっては、久しぶりの外出でもあったので、講師の石坂先生をのぞき込むかのようにマスクをした顔が取り囲み、一生懸命話を聞く姿が印象的でした。
最初に新宿西口と歌舞伎町にある韓国料理店と闇市のあった通りを訪れました。パンデミック以前、当たり前のように通り過ぎていた場所に、戦後の闇市や売春、朝鮮半島出身者にとって重要だった暮らしの名残があること、そしてその名残は再利用されて新たな暮らしを支えていることが驚きであり、興味深かったです。
参加者からも、「ここに来たことあるけど、こんなことがあったなんて知らなかった」、「こんなところにあったんだ!」という発言が数々なされました。地図アプリが普及している今、目的地に最短でつくことが重要になり、寄り道や、携帯から目を離して周囲を観察することが少なくなっているのではないかと気づかされました。また、夜に光るネオンに目を奪われて、見過ごしていたということにも気づきました。
いつもの新宿が少し違って見えてくるようになった私たちは、そのまま大久保地域へ向かいました。すると、さっきまで整然と滞りなく進んでいた参加者の列に異変が生じるようになりました。次の目的地へ進む間、学生たちは「あそこに朝鮮語の標識がある」「こっちにはヒンディー語が書かれている」等、様々な文化が共生している大久保地域をそれぞれの視点で観察し、話し合うようになり、寄り道と立ち止まりが増えるようになったのでした。
様々な言語がひしめく住宅街を通っていくと、移住してきた台湾人がつくったとされる豪華絢爛な媽祖廟が現れ、感嘆の声が上がりました。そして、私たちの持つ新大久保への「K-POPや韓国料理屋が立ち並ぶコリアンタウン」というイメージが覆り、大久保地域がどのような歴史を持ち、誰が移住してきて、どのように発展し、共生しているのかについて議論しながら、歩みを進めるようになっていきました。
そこから、今や住宅展示場になったロッテ工場跡地や今でも残っている韓国広場、1990年代に始まった韓国食堂の初期のものの一つで、日本人に初めて知られた店である辰家を訪れ、今後何が残って何が消えていってしまうのか、大久保地域の将来について考えさせられました。
最後は、さっきまでいた繁華街とはうって変わった閑静な戸山公園の中を歩いていきました。1873年、旧尾張藩下屋敷跡に陸軍兵学寮が建てられ、翌74年に陸軍戸山学校となりました。創氏改名を進めた朝鮮総督・陸軍大将、南次郎は戸山学校近くに屋敷を構え、最後の朝鮮総督になり敗戦を迎えた陸軍大将阿部信行もやはりこの付近に屋敷を構えていたといわれています。たった二時間のフィールドワークでしたが、久しぶりの運動に疲れた様子の参加者もいれば、様々な考察を得て話し足りない様子の参加者もいました。
ちょっと立ち止まって、寄り道
今回のフィールドワークは、学びへの大きな可能性を示してくれました。パンデミック以前、国際的な移動に主眼を置き、国外での活動や調査、支援に大きく依存し、国内での活動の意義を見過ごしていたのではないかと思いました。国際的な移動が困難になった今だからこそ、私たちは、足元にある歴史と多文化共生のためのヒントを見直してみることが今後の国際協力を考える上で重要ではないでしょうか。
今回のフィールドは大久保地域でしたが、わたしたちの近所にも、ちょっと立ち止まってみると、歴史の爪痕と明日を考えるきっかけを見つけられるかもしれませんね。
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