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戦闘激化の南スーダン:自衛隊PKOは駐留を続けてもいいのか

JVC代表理事 谷山 博史
2016年7月21日 更新
隣国スーダンに出張中の谷山博史JVC代表理事。こちらの写真は2011年に撮影されたものです。隣国スーダンに出張中の谷山博史JVC代表理事。こちらの写真は2011年に撮影されたものです。

自衛隊がPKOで派遣されている南スーダンの首都ジュバで激しい戦闘が発生しました。今月7日に始まった銃撃戦で270人以上が死亡しています。しかし民間人の犠牲者の実数はもっと多いと言われています。4万人もの避難民が出ており、食品店が略奪を受けたり、物資輸送が検問で止められたりしており、食料不足も憂慮されます。11日に敵対する大統領派と副大統領派の双方から停戦命令がでましたが、兵士同士の衝突や略奪行為が今後も起こる可能性があり状況は予断を許しません。

自衛隊は南北スーダンの内戦が2005年の和平合意によって終結したことを受けて2008年から南スーダンにPKO(国連平和維持活動)の一環として派遣されました。南スーダンがスーダンから独立した2011年以降も駐在を続け現在に至っています。任務は復興支援であり、自衛隊の施設部隊が道路建設など業務に当たってきました。しかし、南スーダンは2013年に政府が分裂。内戦状態に陥り、250万人もの国内避難民、難民を生み出すまでに混乱しました。その間も自衛隊は南スーダンに駐留を続けていました。

事実上の内戦状態にある南スーダン

2015年には政府・反政府勢力の間で和平合意が交わされ、平和が訪れると期待されましたが、戦闘行為は未だ収まっていません。政府、反政府双方のリーダーが本当に和平を達成する意思があるのかどうか、末端の兵士にまでは命令が届いていないようです。また、政府側と反政府側が統一政府をつくるという合意がありながら軍の扱いについて何も決まっていませんでした。また双方の側に生まれた強烈な憎しみや反発をコントロールする手立てがないまま両軍が接触したことも、戦闘が散発的に発生している理由でしょう。

7月7日から、政府軍・反政府軍が首都ジュバで戦闘を開始。各地で襲撃が頻発。国連が管轄する避難民の保護センターにおいても避難してきた住民に対して、政府軍が発砲するような混乱状況です。PKOとして派遣されていた中国軍兵士二人も混乱の中で死亡しています。そんな事実上の内戦状況の中、自衛隊は駐留を続けています。

PKO5原則に矛盾していないか

そんな中、自衛隊はどうするのか、立ち止まって考えなければいけません。自衛隊は新しい任務として、現地にいる邦人を国内輸送する計画がありましたが、結果的には自衛隊による陸上輸送は取りやめになりました。今年の秋には安保法制で可能になった駆けつけ警護が新たな任務として下命される可能性があります。

そもそもこの状況で自衛隊が南スーダンにとどまっていいのでしょうか。中谷元・防衛相はこの状況を「武力紛争に該当する事態ではない」と言っています。紛争ではなく「発砲事案である」と明言しています。これが単なる発砲事案だというのは、現実を直視していないと言わざるをえません。PKO5原則に照らし合わせれば、ひとたび紛争状態になれば、自衛隊は撤退しないといけないのです。日本政府は現実を捻じ曲げて、都合のいいように解釈している、と言われても仕方が無いのではないでしょうか。一連の騒動を見ていると、小泉純一郎元首相がイラク・サマワへの自衛隊派遣に際して「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と言った迷言を思い出します。

日本にはPKO以外の選ぶべき道がある

今の状況ではPKOですらも敵とみなされ、攻撃される可能性が高いと言わざるをえません。反政府武装勢力側の住民を保護しようとすると、政府軍から敵とみなされる危険性が高い。PKOそのものが紛争当事者に陥る、ということもありえる危険な状況です。武力で解決が計れないなか、武装勢力を鎮圧する(場合によっては政府軍と交戦する)という方向ではなく、中立の立場で仲介に入るなど、の必要があります。今、日本が取るべき道は制度的に矛盾した中で、紛争状況にある戦地に自衛隊員を追いやることではなく、日本の平和ブランドを活かした紛争の仲介ではないでしょうか。

JVCが南スーダン独立前に支援していたジュバの整備工場。現在は南スーダンの整備士・スタッフにより運営されている。JVCが南スーダン独立前に支援していたジュバの整備工場。現在は南スーダンの整備士・スタッフにより運営されている。

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