先日、岡山に行く用事があり、JVCの理事である田中優さんの新居(岡山県和気郡)にお邪魔してきました。優さんは、きっとNGOの活動に興味がある方なら誰もが一度は夢見る「電気の自給率100%」を自宅で実践している方。環境活動家としての著書や講演も多数あるので、ご存じの方も多いことでしょう。かくいう私も、優さんのような暮らしにずっと興味を持っている1人。マンションでの1人暮らしを言い訳に何も踏み出せていない自分に喝を入れるためにも、今回の訪問を決めました。
優さんの新居は、山に囲まれた160坪の敷地の中に建つ13坪のミニマムハウスです。入口にはさっそく太陽光パネルが。3人家族の生活の電気はすべて、この太陽光パネルによる自給です。このパネルで発電した電気を、パーソナルエナジーというバッテリー装置に蓄電することで、10.5Kw分の電気を蓄電しておくことができるそう。優さん宅は1日平均3Kwの電力消費とのことなので、雨が続いても3日分の電気までは、蓄電しておくことができることになります。
2か所に設置されている太陽光パネルは両方とも、地面からすぐの場所にありました。太陽光パネルの大敵は表面の汚れで、汚れが原因で発電しにくくなることが多いそう。いつでも気になった時に洗い流しやすく、また、修理もしやすいという理由で地面近くに設置しているとのことでした。太陽光パネルの後ろに見えるのは太陽熱温水器です。優さん宅は井戸で水を汲み上げ、その水を温めてお湯としても使用できるようにしています。電気だけでなく、水も井戸水を使用しているので、水道料金もかからない暮らしです。
単純に、太陽の恵みをフルに活用した暮らしが、羨ましい。「今日は晴れだから電気がたくさん貯まるなあ」なんて暮らしは、考えただけでワクワクします。もともと晴れの日が大好きな私ですが、さらに晴れの日が嬉しく、待ち遠くなるんだろうなあ、なんて気持ちだけが先走りしてしまいます。
さて、優さん宅は、エネルギーの自給はもちろん、家そのものの素材や建て方にもこだわりが詰まっています。化学物質や、それらを含む接着剤を一切使わない住居は、木の香りが漂い、心から深呼吸をしたくなる空間でした。

使用されている栗駒木材の木材は、現在流通している建築資材の90%とも言われている中・高温乾燥材ではなく、「低温」「燻煙」乾燥が施されているものです。低温+燻煙乾燥を施すことで、ダニ・シロアリ・カビを寄せ付けにくく、家を長持ちさせる効果があることが科学的にも実証されており、また煙の性質を使って木材内部の「ひずみ」を均一化できるなど、歪みを防ぐ効果もあるそうです。アトピーやぜん息の原因となる有害な化学薬品処理の必要もないことから、優さんは自らが共同代表を務める「天然住宅」でもこのような資材を使っての住宅づくりをすすめています。少し赤みを帯びた木の色がとても素敵だな、と思ったのですが、これは低温乾燥独特の木材の色だそう。初めて実物を見ましたが、機能面はもちろん、見た目も素敵な資材だなと感じました。
お邪魔したのは2月の下旬でしたが、冬の必需品のストーブは、「ペレットストーブ」でした。ペレットストーブは、おが粉やかんな屑など圧縮、成型した小粒の固形燃料(=ペレット)を燃すストーブのことで、これまた木の良い香りがたちこめます。木にはもともとリグニンという成分が含まれており、これに圧力を加えると溶けて接着剤の役割をしてくれるそうで、ペレットには余計な接着剤が含まれておらず、上質な木質100%でできているそうです。
2時間弱の弾丸訪問でしたが、難しそうな暮らしを当たり前にやっている優さんを見て、なんだか色々と考えてしまいました。「原発や戦争などの問題が続く世界なら、それらが問題にならない世界を作れば良いでしょ」と当たり前のように言い、それを実現するための暮らしをまず自らが実践している姿勢は、何から何まで勉強になるものでした。著書などにも書かれていることですが、私は優さんの次の考えにとても共感しています。
「戦争・紛争地に共通するのはたった5つのこと。(1)石油がとれるか、(2)天然ガスがとれるか、(3)それらのパイプラインが通るか、(4)鉱物資源が豊かか、(5)水が豊かか。要は資源の奪い合い。だったら、その資源の奪い合いを、無意味なものにすればいい。とりあわなくてもいい世界をつくればいい。自分の生活を見直し、自身でまかなえるくらいのエネルギー消費で間に合うような生活にして、各人がエネルギーを自給すればいい。よく、「原発をなくすのはいいけど、その分の電気をどうするの?」という議論になるけど、実際、自分の暮らしを見つめてミニマムに暮らせば、快適に生活しながらエネルギーを自給することは難しくない。命をかけてまで原発や資源に頼る生活をしなくてもいい世界を作ればいい、というシンプルな話。」
優さんの話を聞くと、自身の今の生活が後ろめたくなると同時に、各自が生活を見直せば、優さんの言うような世界は難しくないのかな? と前向きな気持ちにもなります。未来を変えるためにまずは自分が行動する。解決したいことがあれば調べて、知恵を出してその仕組みを変える努力をする。未来に対する前向きな期待感を持つ。これらのことを、私は優さんの著書やお話から学んできました。そして今回実際にご自宅にお邪魔し、その実践を自分の目で見たことで、今さらですが「やっぱり少しずつでもいいから、自分も生活を見直そう」という気持ちになりました。世界の未来について考える、というと何だか仰々しく感じてしまう部分もありますが、自分の生活を見直してみることなら、今すぐに誰もができることなのではないでしょうか。私もさっそく、まずは自分が日々どれだけの電気を使っているのか、調べることから始めることにしました。小さな一歩から、地道に続けて行きたいと思います。
★田中優公式サイト"持続する志" http://www.tanakayu.com/
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