3月13日にJVC東京事務所にて第8回「気仙沼はいま」を開催しました。東日本大震災から2年が経ち、気仙沼に残されている様々な課題について報告しました。以下、現地駐在している岩田と石原からの報告を掲載します。
気仙沼市は現在、人口約69,000人で、震災前に比べ約5,000人減少しました。JVCは現在、気仙沼市のなかの鹿折(ししおり)地区で活動をしています。鹿折地区は、津波と火災で大きな被害を負いました。鹿折地区の中でもJVCは特に「四ヶ浜(しかはま)」という場所を中心に活動しています。
以下、少しテーマ別にお話ししていきます。
仮設住宅について
これまでも一部の仮設住宅に支援が集中し、規模の小さな仮設住宅には支援が届かないといった問題がありました。また、個人情報保護法の観点から行政が持っている個人情報が私たち市民団体とは共有されません。ですから、私たちも個別に訪問して状況を把握することから始めました。仮設住宅の入居者の中には、社会参加の機会が減った方も少なくありません。阪神淡路大震災ではそうした社会参加の機会の減少が結果的に孤独死を招くなど大きな教訓を残しました。そこでJVCでは仮設住宅の集会所を活用して、体操教室や趣味の教室など住民が活動する場を提供するようにしています。
大型公共事業について
震災2年目を特集するTVでも取り上げられた防潮堤ですが、四ヶ浜でもこの計画が進んでいます。実際には防潮堤だけでなく、四ヶ浜では道路開発や架橋事業など大型公共事業がいろいろと計画されています。そうした公共事業に対して、住民の間には期待と不安が入り混じっています。こうしたことを踏まえると、集落の形は震災以前のそれとは大きく変わってくることが容易に想像されます。どういった集落が形づくられていくのかを我々もイメージしながら、大型公共事業の負の影響が予想される場合には、それをいかに最小限にできるかを考えています。
住宅再建について
住宅再建は住民にとって切実な課題です。自分の家がいつになったら再建されるのか見通しがつきません。一般には3年後といわれていますが、本当にその通りになるのかどうか不安を抱える住民も少なくありません。一方で仮設住宅にも期限があります。「仮設住宅を出ろ」と言われるのではないかという不安も住民の間にはあります。
住宅再建の方法は大きく分けて3つあります。ひとつは自力で再建すること。2つめは防災集団移転促進事業という制度を活用して、高台に移転する方法。3つめは災害公営住宅という、いわゆる復興住宅と呼ばれる住宅が建つのを待ってそこに入居することです。
防災集団移転促進事業では、平成26年から27年度に建物が建てられる土地が整備される予定です。そこから家を建てていくことになります。建設業界はまさにバブルの状態で、いま注文しても業者待ちの状態が続いています。震災前には気仙沼市内で建てられる新築戸数は年間約70棟ほどでした。この数字だけ見ても、地元の業者だけではとても賄うことはできません。また、ただ家を建てればいいのではなくて、これまで近所付き合いを大事にしてきた住民の人たちが、新しく作られる住宅地で住民同士の関係をどう取り戻していくのか、が課題となります。
生業・産業について
仮設商店街の現状について。気仙沼市内にもいくつかプレハブで建てられた仮設商店街がありますが、経営は軒並み厳しいようです。観光客が減っていることも一つの要因です。現在の店舗はあくまでも仮設のものなので、かさ上げがされないと元の場所に自分の店舗は建てられません。鹿折地区の商業地域のかさ上げが完了するのは平成29年度と言われています。
また、雇用の問題もあります。雇用が足りていないと言われていますが、実際には、募集内容と求職者が就きたい職のミスマッチが起きています。求人の内容も短期雇用で不安定のものが多かったり、以前の仕事とは異なる職であったりするなど課題が挙げられます。
水産業や漁業においても一部で再開はしたものの、今後、各沿岸部の漁港をはじめとするインフラ整備は必要でしょう。国や行政の資金的バックアップも必要です。また、外部資源をどう活用していけるのか、外といかにつないでいくかが重要になってきています。JVCとしても、大きな産業への関わりは難しいですが、四ヶ浜で養殖業を再開しようとしてきた人たちとは養殖体験のイベントを行うなど地元の養殖業者を盛り上げようと様々な取り組みをしてきました。ただ、収入に直結することなのでNPO団体やボランティアがどこまで関わって良いのかは非常に悩むところです。
まとめとして
これから自分の住まいや仕事場を取り戻そうとする人たちにとって、現在の暮らしは「仮の生活」と言えるでしょう。長期化する仮の生活をいかに支えるか。住まいをすみやかに取り戻すことと同時に、家を取り戻すだけではなくてご近所づきあいを含めたコミュニティをいかに再構築するかが重要だと考えています。
また、震災以前から続いているこの地域の問題にいかに取り組んでいくのか。すなわち、過疎や高齢化の問題への対応です。JVCは2013年度以降、仮設での暮らしを支えながらも、過疎・高齢化の集落に残る人たちの尊厳を守り、自分たちの暮らしに誇りが持てるようなコミュニティの再構築を住民の方と共に協力して進めようと考えています。
皆さんができること
ぜひ気仙沼を訪問してほしいと思います。震災前も観光業は重要な産業の一つでした。その産業の一つの柱が大きなダメージを受けました。「被災地なのに観光していいのか」という後ろめたさを感じられる方も多いと思います。ただ、気仙沼の人たちは来てほしいと願っています。
2つめは気仙沼を含め、東北の太平洋沿岸部は「被災地」と呼ばれています。この「被災地」という捉え方を見直すべきなのではないかと感じています。それはつまり、東北の太平洋沿岸部を未来の防災や日本社会が抱える高齢・過疎の問題解決にいち早く取り組む「先進地」として捉えなおす必要がある、と。そう考えています。
以上
質疑応答(一部を抜粋して掲載します)
Q. 防潮堤への住民の意向は?
A. 海と共に生きることができなくなるとして反対を貫く人もいますが、単純に反対派/賛成派に分かれている訳ではありません。個人的な気持ちとしては反対でも、防潮堤が計画されている土地を買い上げてもらいたいと考えている人や防潮堤を整備して早急に漁港を復旧してもらいたいと思っている人にとっては「反対」と言えないような複雑な思いがあります。
Q. メディアがこぞって伝えることが現地の人にとって負担になることもあるのでは?
A. 2年目を迎える日には多くのテレビ局や新聞社が現地に取材に訪れていました。そうしたメディアの局所的な集中が負担になることはあると思います。私たちも活動する団体ではあるものの、メディアとしての機能してしまう側面あることを自覚しないといけません。外の方に伝える際には、細心の注意を払ったり、住民から許可を得たりするなどこれまでも気を付けてきましたが、今後も十分に気を付けていくべき点であると思います。
Q. これまでの海外での経験はどう生きているか?
A. 海外での具体的な技術よりも、これまでのJVCの経験から「これはやってはいけない」、「こういう姿勢で臨むべきだ」という行動指針は気仙沼で活動する際も役立っています。
Q. これからどれくらいの期間、だれを対象に活動をしていくのか?
A. 気仙沼では2013年度から3年をひとつの目途に、今日お話しした四ヶ浜を中心に活動をしていきます。
2012年度、「気仙沼はいま」と題して8回に渡り、気仙沼で起きていることをお伝えする機会をもってきました。2013年度もメディアではなかなか伝えられていない事柄を取り上げて発信していきたいと考えています。企画の詳細はホームページで広報していきますのでご期待ください。「気仙沼はいま」にご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。今後もJVC気仙沼を見守っていただければ幸いです。
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