\n"; ?> JVC - 複雑な中東情勢を(なんとか)図示してみた - 東京事務所スタッフ日記
2013年1月 4日 【 東京事務所の日々

複雑な中東情勢を(なんとか)図示してみた

会報誌レイアウト・総務担当 細野 純也
2013年1月 4日 更新

JVC会報誌で「中東」を特集しました

あけましておめでとうございます。JVCで会報誌Trial&Errorの編集を担当しております細野です。今年もよろしくお願いいたします。

このTrial&Error(以下T&E)とは、全国のJVC会員の皆様に隔月でお届けしているもので、創刊はJVC創設年1980年の12月。以降32年にわたりまして、JVCの各国現地での活動報告はもちろん、その時々の出来事に関する記事や国内でのイベント情報などを掲載しているものです(JVC会員の皆様には、最新号を除くバックナンバーをこのウェブサイト上で順次公開しています)。

さて、先日バックナンバーを公開しました今年10月末発行のT&E no.298の特集では、『「アラブの春」から改めて中東を考える』と題しまして、2011年に大きく報道されたいわゆる「アラブの春」と呼ばれる中東地域での一連の動きから、あらためて過去20年、今、そして今後の中東の展望も含めて捉えてみました。これにあたっては、中東地域に造詣の深い朝日新聞の川上泰徳記者を迎えまして、JVC代表の谷山、中東地域の担当スタッフをまじえての座談会を設け、これを収録しました。A4誌面で6ページ、とても密度の高い記事となりました(イヤほんとに)。

その記事本文は上のリンク先からお読みいただくとして、このテーマで特集を組むことが編集会議で決まった時から、ひとつやってみたいことがありました。それは、中東諸国/諸組織間の関連を図示してみる事でした。

中東諸国/諸組織間の複雑な政治関係を図示してみる

そもそも私自身それほど中東に詳しくないこともあり、以前から「中東...っていわれても、複雑すぎてどの側面から理解・説明したらいいのか」と迷うことが多かったのです。関連書籍もたくさんありますが、さてどれから手にとっていいものか、と本棚の前で迷うこともしばしば。

そこで「百聞は一見にしかず」。いい機会なので、川上氏やスタッフの手を借りまして、今回は以下の図を描いてみました。

中東地域における主な対立関係中東地域における主な対立関係

この図では「いま現在の国家/組織間の主な政治的関係」に焦点を絞ってあります。

図中左側のキャプションにもある通り、もちろんこの図で中東のすべてを説明できているわけではありません。それぞれの歴史やその統治体系、宗教的状況、経済隆盛、人口移動、資源分布などまで考えると、とてもではないですが一枚の図で描き切ることはできません。

また、こうした図は「描いた瞬間から古くなる」という側面もあり、とくに今現在ダイナミックに動いている中東諸国の状況をアップデートしていけるわけでありません。

しかし、とにかく中東のことを知ろう、考えようとするたびに、どこから手を付けていいのかわからなくなって頭が「???」となるような方にとって、すこしでも中東理解の最初の助けになればと思って今回描いてみました。もちろん私もその「???」となるうちの一人ですので、今回はいい勉強になりました。

ぜひ記事本文といっしょにお読みいただければと思います。また、twitterやfacebookなどでコメントなりツッコミなどもいただけますと、このページ下部にも表示されますので、ぜひお寄せいただければと思います。

JVCスタッフおすすめの中東入門本

これに関連しまして、スーダン事業担当で学生時代の専門がイスラーム世界だった佐伯に、中東を理解するための入門的位置づけでおすすめの本を2冊紹介してもらいました。

『オスマン帝国と立憲政 -青年トルコ党における政治・宗教・共同体』
(藤波伸嘉著/2011年/名古屋大学出版会)

ヨーロッパ列強に食い散らかされてゆくオスマン朝トルコ帝国末期に、自らトルコ的なるものをつかみとろうと生まれたのが「青年トルコ党」でした。憲法と信仰、国民の統合、といったいまも困難な立論に果敢に取り組み、かれらの国を侵食するヨーロッパに立ち向かう「トルコ」をつくりあげようとする様子が克明に書かれています。

お値段もよろしく(笑)、噛み応えのある概説書です。歴史背景や学問用語にちょっと腰のひける方もおられるかもしれません。ですが、オスマン末期のトルコが自らの拠って立つところを求めて悪戦苦闘する姿は、現代のアラブ地域にも通ずるものを感じられるでしょうし、われわれも他人事には思えなくなります。

『子どもたちと話す イスラームってなに?』
(タハール・ベン=ジェルーン著/2002年/河出書房新社)

「パパ、"イスラーム教徒"って悪い人なんでしょ?」という幼い娘の問いかけから、親子の会話の体裁で、イスラームとはなにか、なぜテロルが起こるのか、ムスリム移民、といったヨーロッパにとってのイスラームという問題について、「さわり」の部分がかみくだかれ、平明な文章で解き明かされます。著者のベン=ジェルーンは、モロッコ出身のフランスの人気作家、『最初の愛はいつも最後の愛』『でてゆく』などの小説で、日本でも根強い人気を誇っています。また、『子どもたちと語る』シリーズはフランスではさまざまな社会問題の概説書として人気が高く、ジェンダー、人種差別などが採り上げられています。

とにかく初心者向けで、分かり易くすいすい読めます。発行年をご覧になってもわかるように、この本は9.11を受けての発行でしたが、いまも古くはなっていません。とくに小学生以上のお子さんを持つお父さん、お母さんに手にとっていただきたい本です。

あわせて、今回の特集を組むにあたり、細野が特に参考にした書籍もあげておきます。

『国際情勢ベーシックシリーズ 中東 第3版』
(立山良司他著/2002年/自由国民社)

2002年刊ともう10年前の本(買ったのもたしかその当時)ですが、中東概観からイスラーム、近大中東、アラブ民主主義と始まって地域主要各国の説明が続き、国家・民族・アイデンティティ、石油と経済、そしてギリギリ収録されたのであろう同時多発テロ以降の中東安全保障、と、中東のさまざまな側面をそれぞれの専門家の視点からまとめあげた概説書。

多くの側面を一度に広く知りたいというときの一冊。巻末にはそれぞれの章ごとに参考文献ガイドがあり、個別により深く知りたい人へも配慮されています。長い近現代史が現在の複雑な状況を生み出している中東においては、内容が古くならない本だと思います。

『アラブ革命の衝撃』
(臼杵陽著/2011年/青土社)

題名から「アラブの春」に特化した本かとおもいきや、その背景としての中東地域の近代史を、植民地支配からの独立、アラブ・ナショナリズム、パレスチナ/イスラエル問題、「民主化」、民族・宗教紛争という各側面から振り返るもの。

上にあげた各側面に対する視点・見方をより深く知るための本。前に上げた「中東 第3版」からより一歩踏み込んだ感じの内容で、読み進めるうちに中東に生きる人たちのおかれた環境や物事の考え方がじょじょに浮かび上がってきます。

これらの本もぜひあわせてお読みいただければと思います。ちなみに、今回の特集編集にあたって上の本を読んだり座談会とその編集を経て思ったのは、「要はオスマン帝国の衰退から現在の中東情勢が始まったんかなー」ということでした。いまだに人気は高いですが遠い昔のローマ帝国の物語よりも、こちらのオスマン帝国のほうがより現代に近いために興味を持てる点もあるかもしれません。

T&Eはバックナンバー順次公開中。ぜひご入会を!

JVC会報誌Trial&Errorでは、こうした記事だけでなく、NGOの視点による記事や各国現地での活動の詳細を毎号掲載しています。過去の掲載記事をピックアップして順次こちらから公開していますし、JVC会員になっていただければ、過去のバックナンバーも順次PDFでダウンロードしてお読みになっていただけますので、ぜひJVCにご入会いただければと思います。

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