在宅被災者とは
東日本大震災が発生して以来、様々な取材や支援の対象となってきたのは、緊急避難所や比較的規模の大きい仮設住宅であった。だが、ここで忘れてはならないのが、被災在宅生活者も多く存在しているという事実だ。家屋の大規模な損壊こそ免れたものの、同様に日常生活の困難さを強いられている人々である。一見、恵まれた環境にあると思われがちな彼らも、様々な支援が仮設住宅(発災当初は避難所)等に集中している傍らで、明日を見すえて日々闘っているのだ。
鶴ヶ浦ににぎわいと語らいを
JVC気仙沼が復興支援活動の対象地としている鹿折(ししおり)地区の最南部に位置する四ヶ浜(しかはま)。その最南端に鶴ヶ浦はある。昨年8月に気仙沼事務所を開設した際、JVCは住民ニーズを調査するための全戸訪問(四ヶ浜)をこの鶴ヶ浦から始めた。高台が多いという地理的条件もあり、集落の約半数が津波の被害を免れた。しかしながら、市街地から距離もあり、交通の便も決して良いとはいえない当地域では、大震災の影響で買い物や通院などが益々困難な状況になっていた。また、近所付き合いも減少し、家屋が残ったことを申し訳なく思う人さえいる事をしばしば耳にし、震災前の当地区の様子を知り得ない我々にさえも、住民がある種の脱力感や孤立感を抱いている雰囲気が感じ取られた。
鶴ヶ浦ににぎわいと語らいを。そのきっかけ作りが出来ないかと、気仙沼JVCは買い物に関するアンケートや、複合型イベントの開催へ向けた様々な協力団体との調整を数ヶ月にわたり行ってきた。
「鶴ヶ浦生活文化センター祭り」の開催
鶴ヶ浦生活文化センター。津波の被害を免れ、昨年夏までは避難所としても利用されていたこの施設は、鶴ヶ浦自治会の中心的な場所である。3月31日(土)の昼下がり、JVCはこの場を活用した複合型イベントを開催した。買い物、お茶のみ、足湯などができ、健康相談や図書の貸し出し等の場も用意された、ショッピングセンターさながらの空間を当センターに実現したのである。
JVCが開催した「鶴ヶ浦生活文化センター祭り」には約25名の参加者があった。センター周辺の在宅住民をはじめ、近隣の他の自治会や仮設住宅からも足を運んでくれた方々がいた。
参加者からは「今日をホントに楽しみにしてたのよ。」「こんな風にお茶を飲みながらみんなで話す機会が最近なかったから、今日はとっても良かったわ。」という声も聞かれた。大震災の被害を受け、ややもすれば世間から忘れられてしまいそうな被災在宅生活者の方々に、震災前のあたり前の日常を忘れないでいてほしい。そして、地域の人々がいつも笑顔で集い語らう鶴ヶ浦であって欲しい。こんな願いを込めての計画であった。
今回の「祭り」が少しでも地域の、そしてそこで暮らす人々にとっての力づけになった事を切に願う次第である。今後も当地域へのゆるやかな支援を継続して行く。
ご協力いただいた方々
①「みのり市」/ 食料品・日用品等の移動販売
②「マルコウ」/ 婦人服の移動販売
③ 気仙沼市社会福祉協議会 気仙沼地区サポートセンター / 健康相談・生活相談
④ 兵庫県立大学・宮城大学看護東北プロジェクト / 健康相談
⑤ 日本財団ロードプロジェクト(とちぎボランティアネットワークがコーディネート) / 足湯
⑥ 気仙沼市立図書館 / 本・雑誌の団体貸し出し
⑦ 鶴ヶ浦自治会 / アンケート用紙の配布・回収、チラシ配布、会場の提供等