2. アフガン人の本気
キャンペーン

ペシャワールではカチャガリとジャロザイの2箇所の難民キャンプ2箇所と市内の投票所2箇所を見学した。この見学とジャララバードからのスタッフの報告によるとカルザイ陣営のキャンペーンが盛んであったことが見て取れる。市内アルバーブロウ地区の投票所の脇にはカルザイキャンペーンチームの詰め所があり、私たちはそこでカルザイ支持者に囲まれ、「ゼンダーバーカルザイ(カルザイ万歳)!」のシュプレヒコールを浴びせられるはめになった。ジャララバードでは自転車に乗った若者やトラックの荷台に乗り込んだ集団がカルザイ支持のシュプレヒコールをしている様子がスタッフから伝えられている。一方同じくジャララバードではジュイハーフ地区の投票所の近くカヌーニ陣営に雇われた女性が投票に向う女性にカヌーニに投票するよう働きかけているのをスタッフのハヤトラが目撃している。またこの日ジャララバードではカヌーニ派の集会を開こうとした前ナンガルハル県教育局長が警察に締め出されるという事件が起きている。
また投票管理の問題も浮かび上がってきた。私たちがペシャワールのカルハニ地区に投票所を訪ねたとき、2,30人のジャララバードから来たアフガン人の集団に投票を拒否された話を聞いた。彼らはジャララバードで登録したためにペシャワールでは投票できなかった。アフガンではどこで投票してもいいことになっているが、パキスタンでは登録した場所で投票しなければならない。登録の際どこで投票しても言いといわれたというが、国内と国外の仕組みの違いは周知されていなかった。
投票を証明するインクの問題は選挙にまつわるアフガンの現状を浮かび上がらせる。ジャララバードからペシャワールに来て投票を拒否された人になぜそんなに投票したいのかという失礼な質問をしたとき、指にインクがついていなければなぜ投票に行かなかったかと周りから問い詰められるというものがあった。一方ジャロザイキャンプでは、インクを付けるとタリバンに指を切られるといってインク塗付を嫌がった人の話を聞いた。インクがついていないと困るという人間、インクをつけると困るという人間、立場によって両極端の反応をする人がいた。
また、ジャロザイ難民キャンプでは一族15家族がすべてカルザイに投票したと言う人間に出あった。なぜそれがわかるのかと聞くと、事前に一族で決めていたという。こうしたことは難民に限らずアフガニスタンの農村部でもある程度共通するといえるだろう。
しかし同時にアフガンの都市部では女性も含めて個人の意志で投票した人は相当数いたと思われる。ハヤトラは投票の前夜夫人に自分の意志で投票するように言った。ハヤトラによるとアフガンの女性は男に従うと言われているが、実際は口では男に従うように言っておいて心の中では自分の意志で行動しようと思っているという。男に従ってきた結果がこの30年近くに及ぶ戦争だったと女性が一番痛感しているからだというのである。
アフガンの人たちが今回の選挙でしめした忍耐と規律は注目に値する。ナザールによると、彼が一番驚いたのは投票所では皆が規則にしたがって一糸乱れずちゃんと2列に並んで投票を待っていたことだという。ナザールはアフガニスタン人がこんなに規則正しく振舞っているのを生まれて初めて見た。そして自分が知る限り皆自分の意志にしたがって投票したと考えているという。
選挙後にJVCの活動地のナンガルハル県グレーク村で聞いた話も印象的である。グレーク村では投票前夜村で8人の若者を選んで選挙の警備に当たらせた。村長は村で事件は起こさせたくなかったという。ちなみにこの村では(男性が出稼ぎで村から出ている影響もあるが)男性投票者800人に対して女性は1300人も投票に行った。
私が直接見聞しただけでもアフガン人は選挙に対して真剣だった。ナンガルハル県やペシャワールではカルザイ支持が圧倒的だった。カルザイがアメリカにコントロールされているという認識はパシュトゥーン人の間でも多かれ少なかれ存在する。それを嫌う人も多い。しかしこの選挙を通してカルザイに投票した人々はカルザイにアメリカの傀儡ではない自分達の大統領としての希望を託したのではないか。