東京から毎月通っている南相馬で最近楽しみになっているのは、原町区の宿舎近くにある夜の森公園を毎朝ジョギングすることです。3周回るとちょうど15分になり、気持ち良く汗をかくことができますし、すれ違う人たちとあいさつを交わすこともできます。加えて、響き渡る鳥のさえずりしか聞こえない朝を迎えられるなんて、東京では味わうことができない最高の贅沢です。
その南相馬の朝をみんなで楽しく過ごそうと、原町区のお医者さんや医療の関係者が音頭をとって「ラジオ体操」を昨年から始めたグループがあります。名前は、「みんなのとなり組」といって、最近NPO法人格を取得した地元のNPOです。代表の堀有伸さんは、震災後に南相馬にいらした精神科の医師で、「人の心は、他の人の心を求めます」と、コミュニティの再生を通じて、メンバーの方々とこころの問題に取り組んでいます。
その「みんなのとなり組」のみなさんに、これまでつながっペ南相馬の方々と一緒に仮設住宅の集会所で行ってきたサロン運営のようすをお伝えする機会が、昨年の秋にありました。その時に、仮設に暮らしている方々も悩みを抱え、その相談を受け対応に心をくだいているサロン管理者の方たちも疲れがみえ始め、ともに心が折れそうになっている状況をなんとかできないかと、相談したのです。
堀医師は、慢性化・複雑化する被災地でのメンタルヘルスの向上が、いままさに必要とされていること、そしてそれを通じて、地域に発生するうつ病や自殺などを中心とした問題の発生を減少させることが求められているとお話ししてくださいました。そして、そのためにもこころのケアに関わっている人たちがまず集まって、自分の直面している状況を話しあったり、必要なスキルを身につけたりすることを通して連携を深めていこう、ということになりました。題して、『南相馬こころのケア連絡会』、「みんなのとなり組」とJVC共催で、その第一回が5月24日に開かれました。
外部講師としてお招きした竹田伸也先生(鳥取大学)は、認知療法がご専門で、「マイナス思考と上手に付き合うための認知療法レッスン」と題した講演をしてくださいました。当日は、市内の病院や保健センター、老人介護施設や社会福祉協議会などの関係者のほか、つながっペ南相馬のサロン管理者を含む52名の方が参加。講演後に設けた意見交換会で、「認知症の話しかと勘違いしてきたが、話しがわかりやすく、自分のマイナス思考をみつめる機会になった」「日々対面している人たちへの声掛けを振り返る機会になった」などといった意見が活発に出て、一回目としていい出だしになったと思っています。
さらに、第二回が6月27日に開かれ、堀医師から「南相馬こころのケア連絡会」の趣旨とサイコロジカル・リカバリー・スキルの講義が行われました。「自分自身の心が苦しくなってしまうような考え方は何なのかを知り、それをより苦痛の少ない考え方におきかえる」、「周囲の人との良い関係を作る」ことに主眼を置いた技術です。また、私の方からも、「仮設住宅のサロンなど、いろいろなところでこころのケアに取り組んでいる人たちどうしが顔を合わせて、互いに取り組んでいることや必要としていることを知ることから始めましょう」、と連絡会への期待を伝えました。
最後に設けられた意見交換の時間では、参加者が3人一組になって10分程度話し合い、その結果を発表しあいました。その中で、仮設住宅の見まわりをしている職員の方から、「震災後3年を経て、仮設住宅の人たちそれぞれの問題が表に出てくるようになり、対応に苦慮することが多い」「自分たちがケースごとにどう対応したらいいのか、人間関係の作り方も含め学びたい」といった意見も出て、あらためて、こういった現場の声をきかせていただきながら、今後連絡会をよりニーズに即したものにしていきたいと思いました。