風薫る、5月。南相馬の、寒くもなく、暑くもない、過ごしやすい季節を迎えたある日。つながっペ南相馬とサロンを運営している、鹿島区の西町第一仮設住宅を訪れた。
西町第一仮設住宅は、区役所や復興商店街から近く比較的便利な場所に位置しているので、散歩を楽しむ人も多い。集会所前に車を置き、いつものように入り口に向かおうとすると、仮設住宅の奥の方からサロン管理者の松本さんが手押し車を押すご婦人二人とゆっくり、ゆっくり、歩いてくる。
サロンに来るのかな、と思って見ていると、途中にあるゴミ集積所の脇で止まり、どっこらしょっと声が聞こえてくるような仕草でお二人と一緒にベンチに腰を掛けた。
松本さん:「Tさん、サロンに行かないの?」
Tさん:「あんまり行ったこと無い。いいんだ、ここで。」
松本さん:「確か、お孫さん、東京の方に行ってんだよね。」
Tさん:「良く知ってるね。そう、この4月に千葉県の松戸市に就職したの。」
谷山:「そうなの、よかったね。」
屈託ないやりとりに、気がつくと私も自然に仲間入りしている。
松本さんは、話題に事欠かないほど、ここに暮らす人たちのことをよく知っている。もともと同じ小高区の人たちとどうしだからということもあるのかもしれないが、時々サロンを出て、こうやってサロンに来ない人たちともよく話すので、情報が入るのだろう。そのうちに親しくなって、この人たちも松本さんがいるサロンを覗くようになるのかもしれない。
他のサロン管理者に比べ、いろいろな装飾を飾って賑やかにしたり、イベントを自分で企画するようなことは多くないが、サロンを利用する人たちから孫のように大事にされている。きっとそれは、松本さんが日頃から誰に対しても別け隔てなく声をかけたり、仮設住宅の間の細い通路を歩いてまわりベンチに腰掛けているおじいさんに声をかけたり、今回のようにゴミ集積所の脇のベンチでおしゃべりしているお母さんたちと話し込んだりと、一人ひとりの名前を呼んで話すことが、親しみやすさを出しているからなのだろう。サロンにいるだけでなく、こういったコミュニケーションのつなぎ方もあるのだなあと、改めて感心させられた。