「こちら、臨時災害放送局、南相馬ひばりエフエムです。」
毎朝9時になると聞こえてくるラジオの声。「ああ、今日も一日がんばろう」、スタジオにいるいつの頃からかマイクの前に座る声の主を思い浮かべながら、その日の予定を確認するのが南相馬での日課になった。月曜日から金曜日までの朝9時、昼の12時、夕方5時からの生放送で市内の情報や放射線量のモニタリング結果を、フリートークを交えながら生放送するほか、放射能に関する相談番組など自主制作番組や他局の番組を組み合わせ放送しているのが他局とひと味違う。している。2年前JVCも応援しの開局されて以来、紆余曲折を経ながらも着実に歩みを進めてんできた、JVCもずっと応援してきた臨時災害放送ラジオ局。そのラジオ局が、いま新たな試練を迎えている。
東日本大震災後に28局の臨時災害放送局(災害FM)が東北で立ちあがった。本来2ヶ月程度を期限に自治体に免許が下りる制度だが、今回のように災害の規模が大きく原発事故の影響で復興が進まない中で、期限が2014年3月末まで延長された。避難者が完全に帰宅し復興が進むめども立たない被災地では、"市民をつなぎ復興を支えてきた災害FM放送を来年で終了させていいのか"という声が出始め、行政単位で再び検討が始まっている。
避難生活者が人口の2割近くいる南相馬でも、状況は変わらない。汚染水漏れなど福島第一原発のトラブルが頻発する中で、今後も適切な情報が迅速に得られるのかと市民の不安は募る。「ラジオは停電であっても聞ける。農作業している自分たちは屋外にいることが多いから、ラジオは災害時も含め重要な情報源になっている。」という南相馬の農家の声を人づてに聞いた。昨年秋に行われた南相馬市民対象のアンケート調査※注(1)では、南相馬に災害FMが「あった方がいい」と応えた市民は8割を越えたている。
いち早い地元の情報をの入手できるかどうかが死活問題につながることを実感させられた被災地。現在、大槌町や宮古市では行政や地元の有志が総務省や関連機関に申請し、さらに1年の免許更新を申し出る動きがあると聞いたそうだ。南相馬では、行政がすでにある広報媒体を活用すればラジオの優先度は低いとしている。その媒体の中には、ラジオではなく南相馬チャンネルという災害テレビの普及を優先させているが含まれている。テレビが優先する理由はその真意はつかめないわからないが、災害FMのように災害時も復興期にも市民が双方向で語りあえに寄り添いあえるうメディアが南相馬でも継続されることを根づくことを願ってやまない。
※注(1)震災・淡路大震災記念人と防災未来センターが2012年11月にアンケート調査を実施
本稿は雑誌『オルタ』2013年7月号に掲載された記事を再編集したものです。記載されている状況や情報は、現在と事なる場合がございます。ご了承ください。