昨年1年間、毎月10日間程南相馬市に滞在し支援活動を行ってきたが、その間放射線量を測り続け、結果、年間積算被ばく量1.37ミリシーベルトという値が出た。国際放射線防御学会(ICRP)の勧告によると、事故などによる一般公衆の被曝量(自然放射線と医療行為による被曝は含めない)は年間1ミリシーベルトとされ、放射線防御の目安としている。最近、住民の帰還を阻むとして緩和が取り沙汰されている除染の目標値もこの値だ。根拠は、「累積で50ミリシーベルトの被曝で、癌になる人の割合が0.5%増える」という経験値と「大人は50年生きる(子どもの場合は70年)」という前提から導かれたものだと聞く。(註1)
月の3分の1の滞在でこの値になるということは、そこに暮らしている人は単純に計算しても年間4.1ミリシーベルト被曝していることになる。手持ちのガイガーカウンター(ECOTEST社 MKS-05)で計測した所、私が滞在している南相馬のアパート(室内)の放射線量は、平均0.23マイクロシーベルト毎時( 以下、μ Sv/h) 。用事があって山側に出かけると0.70~0.80μ Sv/h になることもある。事務所のある東京都台東区の線量が0.007μ Sv/h程度なので、約10倍の線量だ。
南相馬ではないが、福島第一原発から西北西40km 以上離れた二本松市で有機農業を営む若手就農者の畑に行った時のこと。ビニールハウスの中で、トマトの苗の植え替え作業を手伝った時、彼女が常に持ち歩いている線量計を見せてもらうと、ビニールハウス内で0.30μSv/h あった。外に出て見ると0.53μ Sv/h、さらにビニールハウスの周囲の溝で測ると0.95μ Sv/h まであがった。
まず農作物への影響が懸念されるが、出荷前に農産物放射能測定を必ずうけ、ほとんど検出限界以下になるという。作物は大丈夫でも、彼女自身の被曝はどうなのか。風評被害を防ぐことも大事だが、農家の健康も同じように心配になる。やめたらいいという話ではない(註2)。生まれ育った土地に安心して暮らせない状況を作りだしてしまったことを憂える。「同じことを繰り返すまい」心に誓い続ける日々が続く。
(註1)『福島原発事故と放射線被爆対策』(解説)2011年4月11日藤村靖之(非電化工房代表、日本大学教授)
(註2)小出裕章、菅野正寿他『原発事故と農の復興:避難すれば、それですむのか?!』(コモンズ)
本稿は雑誌『オルタ』2013年6月号に掲載された記事を再編集したものです。記載されている状況や情報は、現在と事なる場合がございます。ご了承ください。