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2013年4月21日

海外スタッフの蒔いた、ほうれん草のタネが芽を出しました。

震災支援担当/ アフガニスタン事業担当 谷山 由子
2013年5月20日 更新

4月10、11日の2日間、JVCのラオス人スタッフとカンボジア人スタッフが南相馬を訪れました。

ほうれん草の種まきをするカンボジアとラオスのスタッフほうれん草の種まきをするカンボジアとラオスのスタッフ

 1泊2日と駆け足の滞在でしたが、印象に残る訪問になったようです。2011年3月11日のあの出来事以来、ずっと気にかけてきた福島に行けたこと、そして、みんなやっと会議から開放され、福島の地元の方々と触れ合い久しぶりに農作業で身体を動かすことができたことが、その理由だったようです。

玄関前で記念撮影(筆者右端)玄関前で記念撮影(筆者右端)

 そもそもは、2年に一度の「JVC代表者会議」に参加するのが来日目的だったのですが、現地のスタッフに日本の現状を知ってもらおうと、事業担当者が南相馬ツアーを企画しました。参加者は、ラオス人スタッフ2名とカンボジア人スタッフ2名、さらに東京の各事業担当と現地からスタッフと同行したカンボジア駐在の日本人スタッフ、そして元ホームページ・インターンと私の合計9名でした。東京-南相馬間の移動は、全員が1台の車に乗り込むという大所帯になりました。

 2日間の滞在とはいえ、実質南相馬で動けたのは一日だけ。初日の昼過ぎに東京の秋葉原にある事務所を出て移動、南相馬に辿り着いたのは、夜の7時半を回っていました。事前に、南相馬でお世話になっているつながっぺ南相馬の代表の今野さんと自動車販売店の社長の奥様のお2人をご招待していたので、11名での賑やかな夕食会になりました。場所は、南相馬で馴染みの中華料理店。「南相馬に来るのは怖くなかったの?」、「私たちNGOスタッフは、カンボジアでもどこであっても、人々の傍にいて一緒に考え、一緒に行動します。怖くなんかありません。」海外から来たスタッフの言葉に胸が熱くなる場面もあり、それぞれの家族の話をするやりとりもありと、和やかな交流の時間を過ごしました。

「まかせて、ラオスでもトラクター使ってるから!」ラオス人スタッフのホンケオ「まかせて、ラオスでもトラクター使ってるから!」ラオス人スタッフのホンケオ

 翌11日は、朝7時半に原町区の有機農家を訪れ、10時頃まで農作業をお手伝いしました。というよりも、私たちのためにビニールハウスの中での作業しやすい仕事を用意しておいてくださったので、農作業体験をさせていただいた、というのが実際です。そうは言っても、腰をかがめ一粒一粒丁寧にほうれん草の種を蒔くのはひと苦労です。作業の中で人気だったのはトマト栽培用の畝づくりです。"豆トラクター(略称マメトラ。小型の耕うん機)"を使って畑を耕すのですが、みんな初めて触るマメトラに興味津々です。そのうえ腰をかがめることもなく比較的楽なので、奪いあうようにして作業が進みました。作業が一段落したのが9時半。家の中で漬物とお茶で一服しながら、農家さんから、スタッフからの"震災直後のようす"や"農業経営について"、"今後のめど"などの質問にひとつひとつ丁寧にお答えいただきました。

:仮設住宅の談話室で折り紙を教わるカンボジア人スタッフのネアリー仮設住宅の談話室で折り紙を教わるカンボジア人スタッフのネアリー

 10時半には、先ほどの農家がある原町区からおよそ10キロ北にある鹿島区の仮設住宅に移りました。短い時間でしたが2箇所の仮設住宅のサロンと折り紙づくりが盛んな談話室を訪問し、二言三言の会話も交わすことができました。中でも、「津波の時は、どうやって逃げたんですか?泳いだんですか?」、「私ら海沿いでねえから、津波はこねかった。」と、津波にのまれた経験のある今野さんも、傍で苦笑いする場面もありました。

浪江町の海岸の向こう姿を見せる福島第一原子力発電所浪江町の海岸の向こう姿を見せる福島第一原子力発電所

 仮設住宅を昼過ぎに出発し最後に視察したのは、避難をしている方々が暮らしていた小高区と最近検問が解除になり入れるようになった浪江町の海岸です。津波で破壊された堤防や建物が並ぶ海岸の先に福島第一原子力発電所が見えたのが、私個人、今も目に焼き付いて離れません。

 南相馬を出たのは午後2時。帰りの移動も長いため、どこにも寄らず車中で有機農家さんにいただいたおにぎりと漬物で昼食をすませ、帰路東京にまっしぐら。それでも、東京にたどり着いたのは7時半を回っていました。「当時、津波のようすや原発事故のようすをテレビでずっと見ていました。その場所に本当に来られるとは思っていなかったので、いままだ言葉でうまく感想を言えませんが、何かやらなければという思いに駆られています。」ラオス人スタッフの言葉をうけ、"国内外の仲間と福島をつなぐ"という私たちの役割を再認識したツアーでした。

「大切な記念です」小さな芽をのぞく南相馬の農家さん「大切な記念です」小さな芽をのぞく南相馬の農家さん

 後日、ツアーの10日後の4月21日に一人で農家さんを再訪しました。農作業をしたビニールハウスでは、小さなほうれん草の芽が肩を並べ賑やかに顔を出していました。畝の脇には、「平成25年4月11日 カンボジア人2名、ラオス人2名、谷山由子さん他4名、ホーレン草の種まきお手伝い」と書かれたプレートが添えられ、「大切な記念です」とうれしそうに眺めていらっしゃいました。