2月22、23日および3月22、23日、「週末は気仙沼。~海のしごとと人に出逢う旅~」と題した気仙沼ツアーを実施しました。この企画の目的は、様々な体験や交流を通じて、浦島地区の魅力や気仙沼の現状、さらには震災の経験・教訓を参加者に伝えるとともに、浦島地区の活性化を図ることです。本ツアーは浦島地区振興会とJVCとの共同企画の下、地元の旅行業者により実施され、合計22名の参加を得ました。
ツアー1日目、まずは浦島地区にある水産加工場を訪問し、ワカメの塩蔵工程の見学を行いました。収穫されたばかりの生ワカメが湯通しされた瞬間に茶褐色から鮮やかな緑色に変わると、参加者からは驚きの声があがりました。また、大量の塩によってワカメが塩もみされる工程を参加者は興味深く見つめていました。
次に、旧浦島小学校を会場として「語り部(住民の方からお話を聞く会)」が行われました。ここでは、震災後に避難所として機能した旧浦島小学校での経験が住民によって語られました。震災の影響で発生した火災の延焼を地域住民が一致協力して食い止めたこと、校庭に「SOS」の文字を描き救助を求めたこと、沢から水を確保し、被災を免れた世帯の食料提供によって急場をしのいだこと等々、資料や写真を織り交ぜながら当時の様子が参加者に伝えられました。住民からは「この地域には『津波てんでんこ』という言葉が言い伝えられています。これは、津波が来る時には人に構わずにまず高台に逃げろという教えです。災害が起きた際には何よりも自分の命を自分で守って下さい」との教訓が語られました。また、「浦島地区の歴史と文化」をテーマとした「語り部」も行い、この地域の人々が長い歴史の中で津波による災害とどう向き合いながら暮らしを営んできたかについて、住民からお話を聴きました。
ツアー2日目、地元住民の協力を得て、養殖業の作業体験を行いました。参加者が住民の手ほどきを受けながら、牡蠣むきやワカメの刈り取りを体験しました。「貝柱を切ると、きれいに殻が開くわよ」はじめは戸惑いながら作業をしていた参加者も、住民のアドバイスのおかげで徐々に牡蠣むきのコツをつかんでいきました。「この部分がメカブで、この部分が茎。ここを切って収穫するんだ」参加者は立派に成長したワカメを手にしながら住民の丁寧な説明に熱心に耳を傾けていました。その他にも、海上見学の時間やワカメ養殖の方法について学ぶ機会を設け、ツアーの最後には市内の山頂から気仙沼湾を一望し、二日間のツアーはあっと言う間に終わりを迎えました。
今回ツアーに参加した方々からは、「震災直後の混乱した時期を住民の皆さんが助け合って乗り切ってきたことがよく分かりました。コミュニティの大切さを強く感じました」「身近なワカメがどのように育てられ、加工され、私達の手元に届けられているかを知ることができて、とても勉強になりました」「震災後、現地に足を運ぶきっかけをつかめずにいました。今回、実際に自分の目で気仙沼の現状を確かめることができました。また、気仙沼に来たいと思います」との感想が語られました。一方、この企画に参加した住民は「皆さんに浦島地区の魅力を多少なりとも伝えられたかと思う。来年のツアーに向けて、さらに工夫を重ねていきたい」と話していました。
震災以前よりこの地域で緩やかに進行してきた過疎・高齢化の問題は、今回の震災によって一層拍車がかかりました。将来にわたり浦島地区が活気を持ち続けていくためには、地域資源を生かし、その魅力を発信し、この地域を訪れる人々を増やしていくことが重要です。今回初めての試みとなったツアーがその内容を充実させながら今後も継続されていくよう、JVCは引き続き住民との協働を進めていきます。
この気仙沼ツアー企画「週末は気仙沼。~海のしごとと人に出逢う旅~」の様子は、地元新聞に掲載されました。