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イラク戦争後6年目のバグダッド

イラク事業担当 原 文次郎
2009年6月16日 更新

3月20日にバグダッド在住の友人のひとり、ムハンマドさん(仮名、50歳台)に日本から電話をしてみた。イラク戦争開戦から6年が経っての状況を聞いてみるつもりで電話したのだが、どうも彼らにとっては3月20日の日付はピンと来ない様子で、

「そう言えば明日は春分の日(ノウルーズ)だったね。思い出させてくれてありがとう。」

という調子の返答で、やけにのんびりとした返事にこちらが面食らうほどだった。

しかし、このような感想が聞かれるのも、このところ、昨年以来のバグダッド市内の治安改善に拠るところが大きく、

「バグダッド市内の市場も賑わっているし、市内の道路の渋滞も戻っている、家の電気もまだ24時間は無理だけれどまあ今のところは足りている。」

という返事だった。

イラク人にとっては戦争の記憶はやはり、米英軍による首都バグダッド制圧、そしてサッダーム政権崩壊の日である4月9日の日付けに刻まれているようだ。
その日電話口に出たムハンマドさんは、市内の中心部で開かれた集会に触れ、

「シーア派の呼びかけによる集会だったが、宗派の違いに関わらず多数が集まったようだ。
しかし、私たち庶民は不測の事態が起きるのが怖くてこの日は一日中、家に閉じこもって外出を控えていたというのが本当のところだ。」

という。

(7日にはオバマ米国大統領が欧州歴訪をトルコで終えた後にバグダッドを電撃訪問するという出来事もあったのだが、この日もムハンマドさんは、「夕方から家族はサウジ系の衛星放送局のテレビドラマに夢中だったからオバマが来ているなどとは知らなかったし、特別に感慨もない」とあくまでも淡泊な反応だった。)

4月6日にバグダッド市内で自動車爆弾による1日の中で6件を超える連続爆破事件が発生し、以来、毎日のように爆破事件が続いている状態の中で迎えた4月9日であるだけに、用心深くなるのも仕方のないことだろう。
しかし、市内中心部の小児病院に勤務するドクターのMさんはこの日も出勤し、

「患者さんの数は増え続けている。単純に病気が増えているということではなくて、昨年来の治安改善のおかげで病院に通えるようになったという要因の方が大きいと思うが。
いずれにしてもこの要望に応えるために私も出勤して来ている。
治安が最悪の時期に身の安全のためにイラクの国外に逃げ出した医師たちも、一部には戻ってくる動きが見えているが、まだまだ十分でなく、人手が足りていない。」

と言う。

一方で、生活インフラの復旧が徐々に進められていることの証と言ってよいのだろうか、この週にはバグダッドのムハンマドさんの住んでいる地域では浄水施設の整備を理由に4日間の上水道の給水停止予定が告知されたという。
ムハンマドさんは言う。

「確かに水道の水の汚れはこのところひどく、口にすることができなかったから、仕方なく高価なペットボトル入りの水を買う羽目になっていた。
市の当局が水の汚染を心配して警告し、一時的な給水停止をするのも無理はないが、それでも4日間も止められたら困る。
また、実際のところ、最初に連絡されていた給水停止の予定日になっても水が止まっていないが、それではいつ止められて、その後に本当に4日で復旧するのかどうかわからないので困る。」

まだまだ復興が本格化するまでには時間がかかる状況のようだ。