イラクでは3月25日以降、イラク治安部隊と駐留米軍によって、シーア派反米指導者ムクタダ・サドル師の民兵組織「マフディ軍」の掃討作戦が行われています。南部バスラで始まった衝突と掃討作戦は、中南部からバグダッドへと拡大。この影響で、すでに400名以上が犠牲になったと報道されています(4月2日現在)。バグダッドでは3月30日まで外出禁止令が敷かれ、水や食料など生活を送るための物資不足も深刻さを深めています。
今、バグダッドに暮らす市民はどのような状況なのでしょうか。バグダッド在住のAさん(男性、50代、現在失業中)に電話で現地の状況を聞きました。
バグダッド3月26日(水)夜 (バスラ掃討作戦開始2日目)
『きょうのバグダッドの状況は非常に悪い。10分前に大きな爆発があった。数分ごとに爆破が起き、現在、通りには多くの警察官が出ている。
きょうは昼間から人通りはなく、店は閉まっていた。水、電気が来ていない。この2日間、全く電気が来ていないので、水の供給も止まった。貯めておいた水でまかなっているが、この先が心配だ。
市内は至るところで危険だ。ニューバグダッド地区は無政府状態で、通りにはマフディ軍が横行している。警察は彼らに声を掛けて静止することもできない。マフディ軍はPRG7(迫撃砲)を持ち出している。
この地区の青果市場は占拠され、路上にタイヤを積み上げて燃やし、よそ者が入って来られないようにしている。
彼らは一般市民の生命に直接の危害を加えるようなことはしていないが、今朝、タイヤを売る市場の店に火を放って燃やした。マーケットの全ての店を焼いた。
マフディ軍はカチューシャ砲(ロケット砲)をグリーンゾーンやカラーダ地区に打ち込んでいる。きょうはカラーダ地区の通りには4発のカチューシャが撃ち込まれた。日本大使館のすぐ近くだ。5分ごとに爆発音が聞こえる。
先ほどムクタダ・サドル師がマリキ首相と連絡を取り、「バスラからバグダッドに帰れ、政府は使者を送ってサドル派と交渉すべきだ」と語ったと聞いた。しかし戦闘は継続しており、マリキ首相は72時間の期限以内に民兵は武器を捨てて投降すべきだと宣言した。
バグダッド市内のサドルシティでは24時間の車両通行規制が敷かれ、米軍による治安作戦が行われている。米軍が展開しているのはサドルシティだけだ。バグダッド市内の他の地域では日中は米軍は全く見かけない。他の地域を警備しているのはイラク軍と特殊警察(注:恐らく自警団:Sahwaのこと)だけだ。
きょうは全ての工場や政府機関、学校が閉められた。マフディ軍はうちの地域にやって来て紙を撒いた。それには「家に居て外出するな、店は開けるな」、などと書いてあった。きのうは、酒類を扱っている近所のマーケットが焼き討ちにあった。キリスト教徒の店主は連れ去られ、戻って来ていない。近くに居た警官はこの様子を見ていたが制止しなかった。
病院は営業をしているが、普通の店は9割がた閉まっている。数軒のパン屋が開いているだけだ。昨日(25日)12時以降、車両通行規制が始まりバグダッド市内を車で通行できなくなった。店が開いている間にと思って、慌てて卵、チーズとタバコを買い込んだ。いつまで持つかわからないが』
JVCも参加している「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)」では、バスラへの緊急支援を検討中です。
バスラについてはJIM-NETのホームページ内「JIM-NETニュース」をご覧ください。