\n"; ?> JVC - またしても「最悪の事態」 - イラク・ヨルダン現地情報

またしても「最悪の事態」

イラク事業担当 原 文次郎
2006年11月24日 更新

11月23日。日本は勤労感謝の日。米国は感謝祭で知られる。3年前の感謝祭を突然のバグダッド訪問で過ごした米国のブッシュ大統領は、今年は自国でイラク政策の練り直しに追われている。
そしてこの日、イラクでは再び何度目かの「最悪の事態」を迎えた。
 午後3時過ぎ、バグダッド市内、サドルシティを目標に自動車爆弾と迫撃砲による攻撃が加えられ、翌24日時点の報道によると、少なくとも161人が死亡、250人以上が負傷したと伝えられ、1カ所で起きた事件の犠牲者数としては、2003年3月のイラク戦争開戦後、最悪の規模となった。
 この3年の間、イラク人の知人からは、連絡を取るたびに「今が最悪」という言葉を聞かされて来たが、今回もまた「今が最悪」ということになった。特に問題なのは、以前には、それでも「今が最悪だけれども、今後は何とか良くなって欲しい」とせめてもの希望の言葉が聴けたことだったが、ここ数ヶ月の間に、その希望の言葉さえ聞かれなくなってしまったことだ。
 サドルシティでの事件に先立ち、午後12時過ぎから3時過ぎまでの間には、この現場から5kmほど離れたところに位置するイラク保健省のビルが武装集団による襲撃を受けた。30名のマシンガンと迫撃砲を持った一派による攻撃は、米軍とイラク軍が駆けつけるまでの間続き、ビルの警備7名ほどが負傷したと伝えられる。

JVCの支援先の病院のひとつは「メディカルシティ」と呼ばれる、保健省ビルを含む複数の病院が立地する地域にある。安否を確認するために連絡を取った医師は無事に病院から帰宅できていた。彼が病院の勤務を終えて帰宅の途に着こうとしていた午後2時過ぎには既に保健省ビルでの戦闘が始まっており、先に帰宅した同僚の医師からの電話連絡で異常事態を耳にしていたと言う。戦闘の音は病院の中までは聞こえなかったが、外に出ると、通りの通行は絶えてガラ空きになっており、車を運転して無事に帰宅するまでの間は気が気ではなかったと言う。この日に限らず、今のバグダッドでは危険なので、毎日通勤経路を変えて身の安全を図らなくてはならないが、通勤でリスクを負う毎日の運転はパニックに陥りそうな気分だとも言う。護身用に銃を持っているのかと意地悪な質問をしてみたが、彼は、「目標を定めて襲って来る相手は複数なので自分ひとりが銃を持っていても役に立たないし、自分は暴力は嫌いだから家にも銃は持っていないよ。」と言う。
 自分の身ひとつを守るのにこれだけ毎日厳しい思いをしながら病院に通い、そして人の命を救うために献身的に働いている。このイラクの医師たちの献身ぶりが報われるようにとの願いを込めて、私たちの支援も続く。