大阪での講演の後、滋賀県まで足を伸ばした。大津の近くの山の中にあるMIHOミュージアムである。
「『子どもたちのイラク』(岩波ブックレット)に、イラクの人たちはメソポタミア文明を誇りにしていると書いてあったので、思いついたのです」
学芸員の駒井さんは中学校の人権教育でイラクを取り上げたという。
東草野中学生とレリーフ模写布(写真一部)このミュージアムには、アッシリア時代のレリーフがある。地元の東草野中学の子どもたちが、地元に伝わるカリヤス染めの布にこのレリーフを模写してくれた。カリヤス(刈安)とは近江地方に群生するススキに似た草で、穂をつけて1mくらいの丈になるそうだ。
このレリーフが描かれた布は、1月に原が以前から交流のあるバグダッドの音楽バレエ学校に届けることができた。イラクの子どもたちも大喜びで、何かお返しを作ってくれると言う。
音楽バレエ学校に渡ったレリーフ今回せっかく来たので無理をお願いして駒井さんにアッシリアレリーフの本物を見せてもらった。モスルの近くで発掘されたものらしい。紀元前約800年のものだという。
「このレリーフは、アシュール・ナシュルパル2世という王の守護聖霊が、清めの儀式を行っている姿を表しています。
この絵を模写することで、世界中の人たちの心が清らかになり、平和な社会が一日も早く実現することを願いました。特に現在緊迫した情勢の中に置かれ、心身ともに極限を余儀なくされているイラクの子どもたちに平和が訪れることを願って、中学生は描いてくれました」
と駒井さんは説明してくれた。
2002年にバビロン音楽祭に参加したとき、当時のラマダン副大統領が、
「イラクは世界で初めて文明が栄えた土地。ここでは最初に文字が発明され、法律が作られた。われわれは文明を持っている。アメリカにはそういった文明の継承がない」
とスピーチしていたのを思い出す。
今のイラクではアメリカの占領で、メソポタミアの遺産を楽しむ余裕などなくなってしまった。アメリカが入ってきてもっとも違和感を感じたことは、やはり歴史のない民、現代人の若者が歴史を壊していく姿だったのかもしれない。
アッシリアレリーフ歴史的な創造物は、眺めているとどんどんと引き込まれる。
神殿に飾り崇められてきたものの持つ、荘厳さと気品。それが心を癒してくれるのだろう。