ガンや白血病の小児病棟の支援活動の中で、医師の要望を尋ねることが多い。しかし、一方通行の「与える」支援になっていないか、これで良いのかと考え込むこともある。
支援の薬品は安価なものではなく、購入資金が日本での寄付である以上、予算枠から必要十分な量の薬を購入できずに悩むこともある。
そんなある日、マンスール病院のマーゼン医師から、
「とにかくどうしてもNavoban(薬の名前)が必要だ。$800集めるからそれで買ってきてくれないか?」との連絡。
イラク国内で宗教団体などの寄付で資金を用意すると言うのだ。
マーゼン医師によると、これは病院ではなく、自分たちの個人的な志でやっていることだと言う。国連の経済制裁により、薬の調達にも事欠くようになった90年代から、寄付を募っては小金を貯め、それを元手に(抗ガン剤や抗生物質などのがん治療薬は高価で手が出なかったものの)、比較的安価な軟膏などを買っては貧しい患者さんに配っていたという。
また、患者さんへの入院の際の注意書きのコピー代なども、乏しい病院の予算ではなく、この様な基金から賄っていたという。
こういったささやかな自助努力や互助組織的な考え方が、旧政権下以来続いていたのかと感銘を受けた。
しかし医師の熱意はさることながら、そうまでして買わないと足りないほど困っているのかと、状況の切迫感を感じる。
このイラク人の寄付に報いたいと考え、彼らの自前の資金に若干の積み増しをし、$1600以上になるように調整、アンマンに電子メールで薬品の発注をした。そうこうしているうちに最終的には、別の薬品も追加で必要となり、総額$4,000ほどになった。

今回の発注も緊急となったものの、幸いにも、日本からの出張者が2月28日バグダッド入りする際に運ぶことができた。
今回はJVCイラク担当の佐藤真紀に医師の林達雄も加わり、医師の目でイラクの医療支援に何が必要かを見ることになっている。
