Happy New Year!今年もあなたがたが平和であります様に
年末年始をバグダッドで過ごしていたため、日本の正月を楽しむことが出来なかったのですが、ちょうどひと月遅れの今、正月気分を味わっています。
イスラームの二大祭りの一つ、イード・アル・アドハ(犠牲祭)が始まり、2月1日から4日はイラクでは休みになっています。次の土曜日の7日まで休みのところも多いです。
この時期は、ムスリムにとっては一生に一度は務めとされるメッカへの巡礼の時期に当たります。またこれを犠牲祭と呼ぶのは、神の試練により自分の息子を犠牲にして殺すことになったムハマド(マホメッド)が、最後は神の思し召しで、息子の代わりに羊を差し出すことになったという故事に基づいているようです。
冒頭に正月気分と言ったのは、日本の伝統的なお正月の様に親戚や家族一同が集まり、子どもたちも楽しみにしている時期だからです。
前日の1月31日まで市場も賑わい、人々も買い出しに忙しく過ごしていました。この日一日、日が暮れるまで断食をしている人もいました。2月1日の早朝からは、家族みんなで礼拝の後、羊を供にして食事をするのが慣わしと聞きました。街頭でもそのための羊を売っていました。
サダム政権時代は、指定されたところでしか羊を買えなかったとも聞きますが、今は街頭で売られています。値段は一匹14万イラクディナール(約1万2千円)です。失業率が70%以上、一般の人々の平均月収が100ドルそこそこと言われている中で、これは月収1か月分の大したご馳走です。
この羊は三つに切り分けられ、ひとつは本人とその家族、もうひとつは親類縁者、残りの部分は貧しい人々に分けられるそうです。

お祭りの時期は子どもたちにも楽しみな季節です。親戚同士が集まると、子だくさんの社会ですから、子どもがたくさん集まり大賑わいです。日本のお年玉のようにいくらかのお金ももらえるそうです。
着飾って遊びに出かけたり、買ってもらった新品のおもちゃで遊ぶ子どもたちもあちこちで見かけました。私の訪問した家庭でも、大人たちは特別なご馳走でお祝いをして、子どもたちはいとこ同士でカードゲームを楽しんだりと、日本のお正月にそっくりでした。
それでも経済制裁による疲弊と戦争の影響は残っているようです。かつてはお祭りの初日には大賑わいだった街の中心部の市場も開いている店が減り、人出も例年より少ないと言います。皆が家に居るせいか、バグダッド市内のいつもの渋滞が嘘の様です。それでもドライバーは、
「かつては普通の日でも渋滞はなかった。渋滞するのは占領軍の通行規制があるからだ」と言います。
また、子どもたちが遊びに行く公園や遊園地にあるのはブランコや手動式の観覧車など簡単な物だけで、それもかなり老朽化しています。街中で遊ぶ男の子が持っているおもちゃに銃が多いのも気になります。この国の事情を反映していると言えばそれまでですが、この子たちが大きくなった時に、本物の銃を持つことが当たり前の世界であって欲しくないと願わずにはいられません。
それでは、イード・ムバラク!(イードおめでとう)
