アンマンでの足の手術の経過も順調で9月26日にバグダッドに戻ったムスタファ君を、定期的に見舞っている。今日は朝から別の支援先に寄った後に足を運んだので、バグダッド市内マンスール地区の一角にあるムスタファ君の家に着いたのは午前11時を少し過ぎた頃になった。
門を叩くと、ムスタファ君のおじさんとお母さんが姿を見せるが、本人の姿が無い。聞くと「学校に行っている」と言う。もう学校に行けるほど元気になっているのかと驚く。
イラクでは10月3日に夏時間が終わり、日本との時差はマイナス5時間からマイナス6時間に開いた。そして翌4日から、学校は新学期を迎えているのだ。しかし、新学期が始まったといっても、戦争前と変わらず授業ができるところばかりとは限らない。現に今朝一番で訪問して来た音楽・バレエ学校は、新学期初日の4日に起きた暴動によって暴徒に襲われて壊されていて、授業を始められないでいる。
学校に通えるくらい元気になったことを喜ぶのと同時に、通える学校があるというのも喜びたい、そう思っていたところ、おじさんとお母さんがムスタファ君の通う小学校まで案内してくれると言う。喜んで案内をお願いした。
小学校はムスタファ君の家から歩いても10分とかからない近所で、自宅のすぐ近くにある運動場(スタジアム)をはさんで反対側の方角にあった。近づくと、元気な生徒たちの姿が多く目に入るのですぐわかった。正門前に車を止めて鉄の扉を開けて入ると、子どもたちの歓声に包まれる。ちょうどお昼前の時間帯で、午前半日で終わる授業時間は既に終わっている。
ほどなく車椅子に乗ってムスタファ君登場。鞄からノートや教科書、はさみなどを次々に取り出しては見せてくれる。彼も学校に行けるのはうれしいようだ。
車椅子は教室に戻って行き、クラスの中を案内してくれる。教室に入ると30-40人はいるだろうか、部屋一杯に元気な男の子の笑顔が溢れている。突然の訪問者にみんな興味津々。その真ん中で車椅子姿で注目を浴びるムスタファ君も得意そうな顔。
次には先生に促されて黒板にコーランの一節を書き始める。なかなか賢い。仲良しなのか、あるいは子分なのか、写真を撮る時にはクラスメートのムハマド君とのツーショットを要求し、終始上機嫌。

学校に行けて楽しいか、友達に会えて嬉しいかという当たり前の質問しかこちらも思い浮かばないのだけれど、それらの質問にも大きくうなずく。クラスの友達も突然の訪問者のカメラが気になるのかしきりに写真を撮って欲しいとせがむが、その姿もまた元気一杯だ。
既に下校時間だということで、教室には長居できず、突然の「授業参観」はここで終了。車で先回りして自宅で待っていると、お母さんに車椅子を押されてムスタファ君は向こうからやって来た。
お帰りなさいムスタファ君。
これから毎日、送り迎えつきとなるとまだまだ大変そうだけれど、まずは新学期に間に合って学校に行けて良かったね。