バスラのイブンガスワン病院には、オーストリアの援助で出来た白血病の子どもたちの‘遊び場’がある。ビデオを見たり、お絵かきをしたり、三輪車などちょっとしたおもちゃがおいてある。
病院にニーズを聞くとまず、薬の支援と医療機器の支援を求められる。しかし、一方で、子どもたちが少しでも痛みを忘れて治療を受けられる環境作りも大切だ。

どんな具合なのだろうとのぞいてみた。専門の保育士がやってきて鍵を開けると、子どもたちがやってくる。化学療法の副作用で髪が抜けてしまっている子がほとんどだ。日本人の僕たちがいると好奇心でのぞきに来る子どもたち。
昨日病院を訪れたときに出会ったヌールちゃん(7歳)は、また写真を取ってもらえると思っておめかししてやってきた。今日は頭にイスラムの女性がかぶるマンディールをつけてきた。これだと髪がなくても大丈夫だ。
お父さんは学校の先生をやっていたが退職した。薬をブラックマーケットで買わなければならなかったので、小さな雑貨屋を売った。今、家を売ろうとしているという。
現在は薬代は無料だが、病院が提供できる数は限られている。そのため家族はバグダッドで買ったり、アンマンを行き来している知人に頼んだりして薬を手に入れている。家族はバスラから150km離れたところに住んでいるので看護も大変だ。
彼女の描く絵は、なぜかフンデルトワッサーのような家。「自画像を描いてみて」と促すと「描き方知らない」という。
1枚目は失敗。2枚目は描き方を教えてあげる。3枚目を勝手に描き出した。案の定、私が見込んだとおりの才能を発揮してくれた。どうだろう、最初は描けないと言っていたのに、わずか一時間で子どもは発達していく。

何人かの子どももお絵かきに熱中し、けらけら笑いながら描いている。「子どもたちのイラク」を見せた。みんな興味津々に眺めている。サダムフセインの肖像画を見つけて、「サダムは犯罪者」と子どもたちが指差す。アメリカの戦車が出てくると、「No!No!」といって本に出てくるアメリカ兵を叩き出した。
なんだか楽しそうなのだ。
三輪車で走り回っている子どももいる。先生がなかなか来ないおかげで、子どもたちと楽しい時間を過ごすことができた。親たちも元気な子どもたちの姿を見てしばし笑みがあふれたようだ。
残念ながら、現在イラクでは、このような子どもたちの遊び場を持つ病院はほかにない。医療設備の充実が優先されているからだ。