ヨルダン国境のルェイシッド難民キャンプに、JVC/カリタス・ヨルダン、そしてCAREの協働により、子ども図書館がオープンした。キャンプの人口の半数が18歳以下である。子どもたちが少しでも楽しく時を過ごせ、“キャンプ”という閉塞感のある場所で、少しでも世界とのつながりを感じて欲しい、そんな目的で設立された。

私たちが子ども図書館を訪問したときは、9歳から13歳の女の子の利用時間。ミッキーマウスのスカーフをおしゃれに巻いている9歳のオムニェちゃんは、ディズニーの本がお気に入り。彼女はパレスチナ人で、4ヶ月前にバクダッドのパレスチナ居住区、バラディアードからこのキャンプにやって来た。
「本を読むのが大好き。」「絵がきれい!」
とディズニーの本を、いとこのアマルちゃんと共に読む姿は真剣そのものだ。“オムニェ”とは、アラビア語で、“希望”を意味するという。
子どもたちに読み聞かせを行ったり、面倒をみているボランティアの一人に、キャンプに住む19歳のザハラさんがいる。彼女はガザ出身のパレスチナ人で、イラク西部のムーサル大学で歯科の勉強をしていた。夏休みのためにガザに帰ろうと20日前にヨルダンに入国、トランジット・ビザの発行もなく、難民キャンプに連れられてしまった、という。
「両親と共にガザで休暇を過ごしたかったわ。でもここから出ることも出来ない。どういうことかしらと思うわ。
同時に、こんな状況にある子どもたちのことを放っておくわけにもいかないと思っている。私にできることはするわ。」
と静かにやさしく語ってくれた。

キャンプに同行した、パレスチナ難民研究の東京外語大学・藤田進教授は
「難民認定も受けることができない、イラク国籍をもらうことも出来ない、よりどころのないパレスチナ人たちに出会った。
パレスチナ人を庇護していたイラク旧政権の崩壊によって露呈される、私たちも知らなかった人々だ。
難民の位置づけもされない、難民よりひどい状況に置かれている。強制収容所に住むパレスチナ人を見たようだ。」
と深いため息をついた。
キャンプは相変わらず灼熱で、はるか遠くの方には、砂の小さな竜巻が渦巻いて見えた。