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戦争の犠牲者ムスタファ君

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2003年7月24日 更新

ジャーナリストの土井敏邦氏に頼まれてムスタファ君を探しに行った。
バクダッドが陥落する2日ほど前、疎開していた母親の実家の前で叔父(父親エマドの兄)と共に車の横にいたとき、ムスタファ君の十数メートル先に米軍の爆弾が投下された。その破片はムスタファの左脚太腿を貫通、叔父は頭部を割られ即死したという。彼はアルカルク病院に入院しているということだった。

5月にこの病院をたずねた時には、空爆で手足を切断した子どもたちがたくさんいた。6月半ばに訪れると
「戦争の被害者の患者はもういませんよ。今は、略奪者に襲われたり、交通事故の患者が増えています」
確かに、手足は切断してしまえばすぐに退院、後はリハビリということになる。

ベッドには、強盗に襲われた人や、交通事故で運ばれてくる子どもたち。中には電気を盗もうとして感電して両腕を切断した中年もいた。薬の援助はあるが在庫管理ができなくて、足りなくなった薬は買えない。院長先生が持ってきた薬のリストをもらい、早速1000ドル分の薬を購入して届けた。

ムスタファ君はすでに退院したようだった。ムスタファ君の実家を探すことになった。

結局彼に会えたのは7月になってからだった。ちょっと迷い込んだが、窓にガーゼが干してあったのでムスタファ君の家だとすぐにわかった。イラクの夏はともかく暑い。夕方の6時になっても熱風が体にまとわりつく。停電が続き、扇風機も冷房も使えない。
それでもムスタファ君は、ニコニコしてわたしたちを迎えてくれた。

左足は骨折したまま。神経も切れているので全く動かない。筋肉の一部が腐っているので摘出したばかりだという。土井さんの話では、ムスタファ君を何とか日本で手術を受けさせられないか思案中だそうだ。父のエマドさんは
「病院に入院していたとき、アメリカ兵がやってきました。『大丈夫。すぐ良くなるよ』と言いましたが未だにこのような状態です。アメリカは何もしてくれません」
と怒りを露にする。

「アメリカはサダムを追い払い自由をもたらした。でも、多くの命が犠牲になった。ムスタファは未だにベッドの上でもがき苦しんでいる。自由に歩くこともできない。これがアメリカのもたらした自由なのだろうか」

イラク戦争はまだ終わっていないことを実感する。
その後わたしたちは、ムスタファ君を励ますために彼の家を頻繁に訪れることになった。

ムスタファ君に絵本を読み聞かせる石垣ボランティアムスタファ君に絵本を読み聞かせる石垣ボランティア