INSANとJVCが2017年8月~10月実施した「平和のひろば」の内容を報告します。
- 1、参加者の選定
- ラパリンなど5つの地区の学校に通っていない子どもの保護者にアプローチし、「ソーシャルアート活動」への参加者を募った。保護者とミーティングを持ち、活動について説明するとともに、参加者についての詳細な情報を得るようにした。 また、インサーンのコミュニティ委員会の協力で、対象の地区の人々にもチラシやバナーなどでプロジェクトについて事前に告知した。
- 2、送迎バス
- 治安が悪いため、子どもたちの安全を考慮し、送迎のバス便を用意した。 定員25人のバス1台で6地区を回り、65名の参加者を2回に分けて送迎した。
- 3、プログラムの実施
- インサーンの事務所がある建物内に開設した「平和のひろば」にて、10回にわたるアートセッションと、4回の校外学習を実施した。セッションは1回あたり 約3時間である(2時間のアートセッションと、1時間の精神科医による精神的ケア)。
セッションは、平和や人権の専門家や、アートソーシャルワーカーであるインサーンのスタッフらが運営し、インサーンのボランティアがこれをサポートした。精神的ケアは、精神科医が担当した。
参加者内訳 (計 65名)
女子 35名 | 男子 35名 | ||
アラブ系 50名 | クルド系 10名 | トルクマン系 5名 | |
計 65名 |
【主な内容は次のとおり。】
8/15 | ①平和構築についての意識啓発 ②子どもたちのプロフィール(紹介)を作成 |
8/23 | ①お面を使ったプレゼンテーション(子どもたちがお面を被って自分たちの意見を自由に表した) ②平和のメッセージ(輪になって目をつむり、互いの手に触れることで挨拶と平和への願いをお互いに伝えた) |
8/29 | ①お絵描きやハンドクラフト(工作)で平和を表現(アラブ系やクルド系の子どもたちは、お互いに相手の旗を描いた) ②日本から訪問したJVCのスタッフを、子どもたちが日本語のカードを使って迎えた) |
8/31 | ①「自分を信じ、大切にすること」をテーマにしたビデオ鑑賞のあと、精神科医による話。 |
10/2 | 小児貧血症センターの訪問(苦しんでいる人々を民族や宗派不問で助けること。子どもたちはこづかいの中から寄付をした。) |
10/4 | 平和をテーマに歌詞を作り、一緒に歌った。 |
10/7 | 日本文化について(日本地図、歴史、和食、和服、文字など) |
10/8 | ①孤児院訪問(孤児たちと一緒に遊んで、参加者から孤児たちに平和の意味を説明) ②遊園地に行き、ゲームをしたり歌を歌ったりして遊んだ。 |
10/9 | 「すばらしい庭」を想像して工作の作品をつくり、「平和のひろば」と名づけた。 |
10/10 | 老人ホームの訪問(スタッフを手伝い、お年寄りのお話を聴く) |
10/11 | 紛争解決をテーマにしたロールプレイ(寸劇)。子どもたちは寸劇を通して、対話することの重要性を学ぶとともに、演劇・舞台・シナリオ・登場人物・監督・観客など演劇に関する基礎知識を得た。 |
10/14 | ①コミュニティの団結と平和共存に関するマンガを読んで、話し合い。 ②平和や人権についてのイメージをどのように絵で表現するかというビデオを鑑賞。 |
10/15 | 平和共存に関するストーリーの読み聞かせ (ファシリテーターがストーリーを読んで、子どもたちの意見を尋ねた。) |
- 毎回、ソーシャルワーカーが子どもたちの様子や反応を観察し、適切に対応した。
- 精神科医もセッションに参加、子どもたちの様子を観察し、適切な処置をとった。
- 毎回、セッションの間にジュースとお菓子を出した。
ハディールさんの事例
11歳のハディールさんは、IS(「イスラム国」)の軍事占領のため、2015年1月にハウィージャを出て、キルクーク市のランピールに避難して来ました。地元での爆弾によるショックのために、家から出る事が怖くなってしまい、学校も辞めました。ハディールさんの両親は、学校に行くように説得することがどうしてもできませんでした。
2017年7月、INSANのソーシャルワーカーが避難民の訪問中にハディールさんに出会い、ハディールさんとその家族は、精神科医との面談を行いました。数回の面談の後、ソーシャルワーカーのあたたかい励ましを受けて、ハディールさんは学校に通うことができるようになりました。