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イラクにおける民軍関係−Humanitarian-Military Interactions in Iraqブリーフィング−

JVC代表理事 谷山 博史 2008年度イラク事業インターン 森 若奈
2008年7月25日 更新

JVCもメンバーになっているNGOの連合体NGO Coordination Committee in Iraq(NCCI)からレポート"Humanitarian-Military Interactions in Iraq"[1]が2008年1月に出されている。PRTs(Provincial Reconstruction Teams、地域復興チーム)に代表される軍主導の民生支援に対して、現地で活動するNGOが声を挙げたかたちだ。

この調査は、人道的スペースが多国籍軍による支援活動によって危機にさらされていることを警告し、また軍の民生支援のガイドラインとなるMCDAガイドラインについても触れられている。

アフガニスタンでは、2003年に米軍が軍民協力による復興支援部隊としてPRT(Provincial Reconstruction Teams:地域復興チーム)の活動を始め、いまや外国軍によるPRTは全国15州に広がる。JVCはPRTがアフガニスタンに導入された時からPRTをなど軍による人道・復興支援活動の問題点を指摘してきた。イラクでもアフガニスタンでの先例が踏襲され、拡大・発展する形で軍による民生支援が行われている。今回イラクウォッチでは、このレポートの要約を紹介し、あまり知られていないイラクにおける軍による民生支援の実態と問題点を報告する。

■軍の民生支援vs人道的活動

イラクで活動する人道支援団体は、軍と人道支援の役割[の境]がぼやけていることを憂慮している。MNF-I(Multinational Forces-Iraq:イラク派遣多国籍軍)に加担していると認識されると、
・地域社会の受け入れを阻害する
・緊急の人道的needsへの対応能力を制限する
といった問題が起こるためだ。

軍の民生支援

人道支援と軍の活動は、時として同じ場所で同じように見えることがあるが、そもそも両者には原則的な違いがある。[2]

米軍の方針において、戦闘地域における軍の人道支援を「戦力多重増強要員」(force-multiplier)として説明されている。戦力多重増強要員 は、情報収集や、force protection、そして「心理的オペレーション」を通して、軍の任務に奉仕している。

軍の民生支援や、それを活用した支援は、戦闘員やメディアによって「人道的」と誤って説明されることがある。

人道支援
・needsにのみ依拠している
・人道、中立、公平、独立といった原則のもと行われている
→これが人道団体が活動する紛争地域で受け入れられる時に不可欠な要素
・地域社会の能力とその地域住民の参加に重点を置く
・救援任務へのアプローチにおいて、持続的である

■最近の問題と傾向

財源は...?

s2003年以降27億ドルが米国議会によってthe Commander's Emergency Response Program(CERP)に充てられており、CERPの資金は、2003年以降増え続けている。

CERPの現状
・2008年1月の時点で、PRTs、Provincial Support Teams(PSTs)、Embedded PRTs(ePRTs)あわせて32が連合軍構成国政府(coalition governments)によって設立された
・コア資金18億ドルによって、米国が始め、英国、韓国、イタリアも始める
・CERPと他の資金をPRTsは使用することができる[2]
・米PRTsは、米国務省に率いられている
・米PRTsスタッフは、主として軍職員、外交官、USAidスタッフ、商業契約者など
・米PRTsに関する文章は、"人道的"役割への言及をしていないにも拘らず、実際にはPRTsは救援物資をダイレクトに住民に供給し、時には提携する地域組織と協力している
・MNF-Iの護衛の下で、様々な形の支援活動がMNF-Iのために行われている
・PRTsのメンバーの中には、MNF-Iの基地に配属されており、役割の一体化に、人的な混乱をも生んでいる

■役割があいまいに

方針においても、実際にも、イラクの独立した人道団体はMNF-Iと距離をとることに配慮している。しかし、武装した戦闘員が住民にダイレクトに支援をしているという背景の中で、それぞれの役割[の境目]はぼやけ、多くのイラク人の認識は、西側の支援団体は、イラク人が"占領"だと思っているものと提携している、というものになる。
→これが人道団体や住民のリスクを増やす要因となる

■人道団体のジレンマ

支援団体は、安全上の理由から目立たぬようにし(low profile)、そして外部の支援団体であることを完全に隠して活動しており、人道団体にとって、自らの中立性、公平性、MNF-Iからの独立性を目に見えるように明らかにすることが難しい。一方で、十分に財源のあるMNF-Iの民生支援は、目立つように行動し(high profile)、自分たちを宣伝する(well-published)のである。

人道団体は、
・短期的にlow profileであることで、人道活動ができる
・一方で、長期的には[low profileであることで]、安全性と持続性が損なわれるというジレンマを抱えている。

■Humanitarian-Military Relationshipのガイダンス

・多国籍軍の役割についての方針と、作戦決定を説明するための
・人道的スペースを多国籍軍の侵入から守るためのガイドラインとして、"Guidelines on The Use of Military and Civil Defense Assets to Support United Nations in Complex Emergencies"(MCDA ガイドライン)[3]がある。
・MCDAガイドラインは、多国籍軍の住民の福利を守る、というジュネーブ協定の義務を軽減させてはいない
・しかし、軍は必要となる支援を提供すべきという条項は、ジュネーブ協定を守っていない
・MCDAガイドラインは、様々な支援、実際に、そして認識における多国籍軍の役割の基礎となる追加条項を備えている
・MCDAガイドラインは、当初はUNの支援活動を扱っていたが、今ではNGO、資金供与団体(donors)、軍隊にも拡大適用されている
・ガイドラインは、MNF-Iの参加国によって起草された
・ICRC、ICVA、IOM、InterActionなどの国際機関によって再検討されている

MCDAガイドラインは、軍が人道的スペースをおびやかす支援活動に携わる時、その方針や行動に関する対応を明確に述べる時に重要なツールとなる。

MCDAガイドラインと、その他のガイドラインによると、戦闘任務にある多国籍軍は、緊急な支援ニーズを満たす民間の能力がない場合の最後の手段としての場合を除いて、住民に直接支援を
行うべきではない、としている。

イラクの多国籍軍は民間の能力が存在しないとみなしているが、人道団体は目立たないようにしているだけ。

参考資料

[1] Humanitarian-Military Interactions in Iraq Briefing Paper 5, NCCI, January2008

[2] 軍の支援とコミュニティー主導のNGOの支援の違いについて、またPRTsの予算については、下記参照。Helping Iraqis Succeed, MercyCorps, June2008

[3] Guideline On The Use of Military and Civil Defense Assets To Support United Nations Humanitarian Activities in Complex Emergencies, March2008