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スタッフのひとりごと

先生の記憶と生徒の思い出

支援者担当 宮西 有紀
2013年10月 8日 更新
ひとりごと:宮西さんイラスト/かじの 倫子

だいぶ前に見たテレビでこんな場面がありました。ある先生の出張授業。最後にひとりの主婦が「先生、私のこと見て何か感じませんか?」と切り出しました。その先生はしばらく黙って、そしてにっこり。「...ずっと感じてましたよ。26年前、○○市立○○中学校3年5組 旧姓○○△△さん。今回、テレビ局に届いた手紙、あなたが書く"と"という文字、2画なのに一筆書きなところがちっとも変わってない。教師にとって生徒は子どもなの。あなたもお子さんがいらっしゃるでしょ。親が子どものこと忘れますか?忘れないでしょ」気がついたら涙がぽろぽろ流れていました。そして、ある先生のことを思い浮かべました。

父の転勤で旧西ドイツで過ごしていた小学校時代。日本人学校6年生のときの担任、S先生。まあるい顔で、まるで日本人形のような黒髪のおかっぱ頭。みんなで「金太郎先生」と呼んでました(女性ですが...)。小学校を卒業するとき、S先生も任期満了で帰国することが決まっていたので、6年生全員で、かぎ針でモチーフをひとり一枚ずつ編んで(男の子も)、それを全員分つなげて大きな膝掛けにして、先生にプレゼントしました。そして、「10年後の3月20日を過ぎた最初の日曜日に同窓会をやろう!」と約束。

そしてその約束は、22歳の3月のとある日曜日に実現しました。S先生は、アルバムはもちろん、あの膝掛けも持ってきてくれました。先生は、その日まで大事に使っていてくれたんですね。みんなも「あ、ココは俺が作ったやつだ」「これは私かな?」と思い出探しに没頭。

金太郎先生、今もお元気にされていますか? 私は当時の先生より年上になりました。今でも「先生の子ども」のまま、独身ですけどね。

No.304 国境が引かれ、対立と不信が残された後で (2013年8月20日発行) に掲載】