スタッフのひとりごと
そばにいなくても、家族。
インターンでタイの農村に二年間滞在していたとき、ホームステイ先のお父さんとお母さんにはとても恵まれていた。お母さんはよくしゃべり、村の女性の中でもリーダー的な存在。その一方で、お父さんはとても物静かな人。いや、お母さんが喋りすぎてお父さんが話そうとしてもさえぎられてしまうのだ。「男はカップ、カップ(はい、はい)と奥さんの言うことをきいていればいいんだよ」とのこと。
そんなお父さんも、お母さんがいないところではよくしゃべる。農業や農村の問題についてとても志が高く、強い意志も持っている人だ。お母さんぬきで、二人で本当にたくさんのことを話しあった。
ある日、都会で働いている娘さんから電話がかかってきた。お母さんは話すのに、お父さんは電話に出ようとしない。息子さんからかかってきたときも同じ態度だった。「元気だったらいいんだよ」とお父さんは背中を向けて言っていた。
ふと、私自身の父親に置き換えてみた。3月11日の震災の時も電話がかかってきたが、そっけなく、ほとんどしゃべらずに電話は切れた。しかし、父親の「大丈夫か」という一言が、心にしみわたった。タイでも日本でも、"不器用な父親"は同じなのだ。あまり言葉は交わさないが、お互いを思いやっている。たぶん、家族だからそういうことができるのだろう。
子どもを思いやる親の気持ちはまだまだわからず、私はまだ子どもなのだなと思った。タイの家族を通じて自分自身の家族のことを考えるようになり、今回の震災でも、改めて家族のありがたさをとても感じた。