7月に「南スーダン」が独立し、ふたつの国に分かれたスーダン。その新しい国境の北側、「スーダン」側に位置する南コルドファン州、青ナイル州で、6月から9月にかけて政府軍と反政府勢力との大規模な軍事衝突が発生しました。村々への空爆を含めた戦闘は今も収まらず、犠牲者や避難を強いられた人々など、国連によるとれば20~30万人が深刻な影響を受けています。うち6万人あまりは国境を越えて難民となり、その数は日々増え続けています。
JVCはこの深刻な状況に対して、スーダンでの避難民支援、また国境をはさんで南スーダン側での難民支援を開始します。
支援予定内容
スーダン・南コルドファン州
州都カドグリ市周辺の避難民1万1千人のうち、乳幼児や高齢者を抱える家族などを中心に食料を配布
- 現地の主食であるソルガム(モロコシ)10トン(10㎏ずつ配布した場合に1000家族分)
- 食塩 800㎏
- 食用油800リットル
南スーダン・ユニティ州
イーダ難民キャンプの南コルドファン難民2万5千人のうち、乳幼児と女性だけの家族、保護者のいない子どもだけの家族等を対象に、難民の女性グループと協力して以下の物資を配布
- 鉄分強化粉ミルク288缶
- 石鹸500個
- 乳幼児用衣料品
募金にご協力ください
スーダンの活動への募金にご協力ください。今回の緊急支援をはじめ、今後予定している避難民・難民支援活動に活用させていただきます。
https://www.ngo-jvc.com/jp/perticipate/fundraise/
クレジットカードでも募金ができます。
https://www.ngo-jvc.com/oldform/form_creditbokin31.html
どうして?どのように紛争が起きたのか?
(紛争は南コルドファン州と青ナイル州の両地域で起きていますが、今回支援を実施する南コルドファン州の状況に絞って記述させていただきます)
南北内戦とヌバの人びと
南コルドファン州には、独自の言語や文化を持つ「ヌバ」と呼ばれる人々が多く住んでいます。長年にわたり開発から取り残され、社会的差別を受けてきたヌバの人々の間では、中央政府に対する反発が強まっていました。1980年代にスーダン南北の内戦が始まると、ヌバの武装勢力が結成され、南部の「スーダン人民解放軍」(現在の南スーダン政府軍)に合流して政府軍(北部軍)との戦闘を繰り広げました。
和平合意による共同統治とその終了
2005年の南北和平合意によって内戦が終結すると、南コルドファン州では政府側とヌバの勢力(スーダン人民解放軍/運動)による共同統治が実現。治安が比較的安定する中、内戦で荒廃した地域の復興が進められてきました。また、和平合意の中では南コルドファン州の将来のあり方(自治権など)について住民参加の協議会が実施されることが決まっていました。しかし、この住民協議は実施されず、2011年7月の南部スーダン独立と同時に和平合意で定められた共同統治期間も終了するのを見越して、政府はヌバの「スーダン人民解放軍」に武装解除を要求しました。同軍は要求を拒否し、そのまま政府軍との全面的な戦闘に突入しました。
数多くの非戦闘員も犠牲に...
州都カドグリでは激しい市街戦となり、その最中には兵士による家屋一軒ごとの探索と略奪、非戦闘員の拘束も行われました。村落部では集落への放火、政府軍による空爆が報告されています。犠牲者の数は予想もつきません。現在、州内は「政府軍支配地域」と「スーダン人民解放軍支配地域」に二分され、その間には敵の侵入を防ぐために多数の地雷が埋設されています。
現地の状況
雨季が始まり種まきの時期にあたる6月に戦闘が始まったため、多くの村人が今年の耕作を放棄せざるを得ませんでした。10月から収穫期が始まりますが、州内での今年の収穫は例年の2割程度と予測されています。食料の欠乏から、今後ますます多くの住民が都市部の避難所や難民キャンプに流入すると見込まれています。
州内の政府軍支配地域に逃れてきた避難民は3万5千人。南スーダン側に逃れた難民は2万5千人。いずれも、食料、生活用品などは支援に頼らざるを得ません。
十分に届かない人道支援
しかし、戦闘が継続する中で人道支援活動は困難を極めています。地雷のため州内の多くの道路は通行不能です。国連・国際NGOの外国人スタッフの州内への立ち入りは政府や軍により禁止されています。このため、どんな支援が必要かを把握するための調査や、支援が確実に届いたかどうかの確認が十分に行えず、新規の支援を保留している国際機関もあります。こうした中、州内の倉庫にある支援物資は11月には底を突くと指摘されています。
難民キャンプでは、ただでさえ周辺の道路状況が悪い上に、11月に入ってキャンプを標的にした北部政府軍による空爆があり、人道支援団体の活動はより困難になっています。
JVCの緊急支援
こうした状況のもと、南コルドファン州カドグリにおいてもユニティ州イーダにおいても、外国人であるJVC日本人駐在員の現地入りは当面は難しくなっています。しかし、カドグリでは現地協力団体と、イーダでは難民の女性グループと連携を取りながら、JVCスーダン人職員が中心になって物資を確実に避難民・難民に届けます。
スーダン・南スーダンにおけるJVCのこれまでの活動
JVCは現南スーダンのジュバにて2006年から約4年間、車両整備工場の運営を通じて元難民の若者への職業訓練や難民帰還に協力してきました。また、2010年より活動の拠点を南北スーダンの境界付近に位置するスーダン・南コルドファン州に移し、住民の話し合いをもとに地域の安定と生活再建を支援する新しい活動を開始しました。しかし、2011年6月からの戦闘激化に伴う治安の悪化により、生活再建を支援する活動は一時休止しています。引き続き安全面に留意しながら、難民・避難民支援を行っていきます。