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2017年8月の「ピース・ヤード」に向けて

JVCイラク事業チーム補佐 中野 恵美
2017年6月 1日 更新

イラク北東部に位置するキルクーク県は、従来アラブ系・クルド系・トルコマン系・アッシリア系など多様な民族が共存していましたが、豊富な石油資源を有することなどから1980年代にフセイン政権下で「アラブ化政策:アラブ系住民を外部から移住させ、非アラブ系住民を追放」が進められ、民族間に緊張関係が生まれ治安が悪化しました。

現地NGOであるインサーン(アラビア語で「人間」の意味)は、人々の間の緊張を和らげ、平和な地域社会を取り戻すために2008年からキルクーク市を中心に活動をしています。

2009年、JVCはインサーンと協力してキルクーク市での「子どもたちと創る平和ワークショップ」を開始しました。キルクークでは、子どもたちは民族別の学校に通うため、他の民族の子どもたちと出会ったり話したりする機会が限られています。お互いを知り合い、交流する場を作るために、各校の校長先生に協力を依頼し、各学校より8歳から12歳の参加希望の子どもたちを選出してもらいました。各地区の長老や責任者(自治会長のような)、宗教指導者らにも協力を取り付けました。治安が悪く爆破事件等が頻発するために、バスによる送迎も必要でした。

ワークショップで演劇の手法を用いて共生について学ぶ子どもたちワークショップで演劇の手法を用いて共生について学ぶ子どもたち

ワークショップは、週に2回程度で期間は約3週間、各回30-60人程度の子どもたちが参加しました。平和構築や人権に関する専門性を持つインサーンスタッフがワークショップ全体を監修し、美術の専門家らがファシリテーターとなり、各回のプログラムを進行しました。内容は、平和や人権をテーマに絵を描いたりアート作品を作ったり、平和や人権に関する歌を歌ったり、寸劇を演じたり、ビデオを見て意見を出し合ったりしました。最終日には、地域の方々を招待して発表会も行ないました。

地域の人々の中には、当初このような取り組みに懐疑的だったり、反対したりする人もいたのですが、回を重ねるごとに参加希望者も理解者も増え、2012年までに5回のワークショップを実施し、延べ約240人の子どもたちが参加しました。その後も継続が望まれていたのですが、資金不足により中断を余儀なくされました。

2014年、インサーンとJVCが「平和ワークショップ」の再開を計画していたところ、武装組織ISによる攻撃が激化し、イラク国内外にたくさんの人々が避難する事態になりました。インサーンとJVCは、キルクークに避難してきた人々に対し食料や毛布を配布する緊急物資支援を実施しました。

アクティビティを通じて子どもの状態を観察する精神科医のアブドルカリーム氏アクティビティを通じて子どもの状態を観察する精神科医のアブドルカリーム氏

そして2015年、それまでの「平和ワークショップ」の経験を生かして「平和のひろば(Peace Yard)」の活動を始めました。「平和ワークショップ」で実施したアート作品の製作や平和に関するディスカッションなどに加えて、戦闘によるトラウマを抱えた子どもたちに対する精神科医によるケアを実施しています。1回あたり約3週間の活動をこれまでに3回実施し、5歳から14歳の子どもたち約170名が参加しました。
2017年8月に、次回のプログラムを予定しています。