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スーダン共和国南コルドファン州での軍事衝突と人道支援活動への影響について

2011年7月14日 更新

さる6月6日、日本国際ボランティアセンター(JVC)の活動地域である、スーダン共和国南コルドファン州において政府軍とスーダン人民解放軍による大規模な軍事衝突が発生し、多くの犠牲者と数万人単位の避難民が発生しています。2005年の和平合意以降、現地の人々によって続けられてきた復興と再建の歩みが、今回の軍事衝突によって根底から覆されました。

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私たちJVCは、2011年1月から南コルドファン州の二つの地域、タロディ郡とエル=ブラム郡で「地域からの平和づくり」として、内戦後の生活再建と平和な社会づくりを後押しする支援事業を立ち上げました。住民との話し合いを経て、事業が本格的に動き始めた矢先、今回の軍事衝突が起こりました。

JVCの事業地であるタロディ郡、エル=ブラム郡の人々も戦闘に巻き込まれ、多くが自宅を離れ、避難しています。地方では政府軍による空爆が続いているとされ、村の人々の安否が気遣われてなりません。

また、カドグリ郊外の国連施設などに避難していた人々は、食料や生活用品も欠乏する中で、州政府によって市内や周辺部の自宅に戻されています。国連と国際NGOは避難民への支援を試みていますが、州政府は国連のカドグリ市内への立ち入りを認めないなど、支援活動自体が困難な状況になっています。

私たちは、住民による地域社会復興と安定のための活動を側面から支えてきた者として、今回の事態に深い憂慮を覚えます。

以下、私たちが現場や関係者から得た情報に基づいて、今回の軍事衝突に至った背景ならびに経緯、現地の状況について報告します。

内戦後の南コルドファン州

スーダン・南コルドファン州では、(北部)スーダン政権与党の国民会議党(NCP)と、南スーダン政権与党のスーダン人民解放運動(SPLM)と同盟関係をもつヌバSPLM(ヌバとは地名であり、その地域に居住する民族集団の総称)との両勢力が拮抗し、長く対立関係にありました。

2005年に南北内戦が終結した後、南コルドファン州では和平合意に従い、州知事・州副知事をはじめとする主要な政治ポストや議会の議席を両者が分け、また内戦を戦った当事者である政府軍とスーダン人民解放軍(SPLMの軍事部門)とが「統合軍(Joint Integrated Unit)」として再編され各地に展開するなど、地域の安定に向けた政治的努力が示されていました。そしてこれまでの6年間は、大規模な軍事衝突はなく、避難していた人々も徐々に故郷に戻り、地域の復興が進められてきました。

くすぶっていた火種が選挙でひろがる

しかし、今年5月に実施された州知事選挙の結果をめぐって内戦以来の政治的対立が先鋭化しました。州知事の立候補者はNCP系現職知事とSPLM系副知事であり、僅差で現職知事の続投が決まったものの、SPLM側は不正選挙を主張して結果を拒否しました。この時点では、双方ともに軍事衝突を回避すべく努めていましたが、他方、カドグリ周辺の兵士や軍用車両の数が目に見えて増えるなど緊張が高まったため、人道支援団体は活動地域を限定して対応していました。

和平合意に基づく暫定統治期間が7月9日に終了するのを前に、5月下旬にスーダン政府は統合軍に解散を命じ、統合軍を形成していた一方のスーダン人民解放軍に対して武装解除するか南スーダン共和国領(7月9日にスーダンから分離独立)への撤退を求めました。これに対してスーダン人民解放軍は「自分たちは南コルドファンの軍であり南部に戻ることはできない」と事実上拒否の姿勢を示しました。

軍事衝突と避難民の発生

上記のような背景のもとに両軍の緊張は高まり、カドグリ市内における警察の武器庫襲撃事件を発端にして今回の軍事衝突が起きました。

6月6日、JVCが事務所を置く州都カドグリ市をはじめ州内各地で激しい戦闘が行われ、15日ごろにはカドグリ市内での戦闘はほぼ終息したものの、周辺部では今も戦闘が継続されています。国連やスーダン国内メディアによれば、村落部への空爆、民家への放火、非戦闘員の拘束などが報告されています。死傷者の数は不明です。

戦闘開始とともにカドグリ市内では兵士による家屋一軒ごとの探索が行われ、また商店、一般住居、国連事務所や人道支援団体事務所などを対象に広く略奪行為が発生しました。

UNOCHA(国連人道問題調整事務所)によれば6月5日以降、州内で少なくとも7万3千人の避難民が発生、JVCの事業地であるタロディ郡でも多くの人々が安全を求めて村を離れ、避難先の学校などに身を寄せています。国連や人道支援団体が避難民に対する水、食料、医療などの支援を実施していますが、国連による物資輸送が軍により制限されるなど、支援活動にも大きな支障をきたしています。

また、カドグリ市周辺に新たに敷設された地雷は避難民が地域に戻る上で大きな脅威となっており、既に犠牲者も出ています。

こうした状況の中、私たちJVCも活動を休止し、状況の推移を見守っています。政府軍およびスーダン人民解放軍が即座に戦闘行為を停止し、避難民の帰還とそれを支援する国連及び人道支援団体の活動を保障すること、また日本をはじめ国際社会が当事者双方に平和的な事態の解決を求めることを望むと共に、引き続き情勢を注視していきたいと思います。